08

「……落ち着きましたか?」

「……はい」

「……すみません。急に泣き出しちゃうなんて……」

でもゴジカさんは私たちを咎めるでもなく、ただ優しく微笑む。

その静かな沈黙が、今はとても嬉しかった。

「フユカさん、これは提案なのですが……。
今あなたの記憶に施されているという封印……その鍵を今この場で開けることもできます。どうしますか?」

「……! そんなことができるんですか!?」

「えぇ。元々その封印は、遙か遠い北の地方に伝わる伝説のポケモンが施したもの。
本来とても強固なものですが、10年という年月の中で随所に綻びができています。
私のサイコパワーを最大まで増幅させれば、その鍵を開けることも不可能ではないでしょう」

鍵を開ける……それはつまり、私がシャルロットとして生きた頃の記憶を取り戻すということだ。

(私は……)

目を閉じて自分の胸に問う。どうしたいかなんて、もう決まっている。

なら、私が返すべき答えは1つだ。

「……お願いします」

「フユカちゃん……」

「……良いのか、フユカ?」

「うん。小さい頃の記憶が戻っても、みんなとの旅の思い出が無くなるわけじゃないからね」

ゴジカさんの目を見て、もう1度"お願いします"と伝える。

それに対してゴジカさんは静かに頷き返した。

「ではニャオニクスを呼んできますので、ここで待っていてください。
……すみませんが、あなたのニャオニクスの力をお借りしても?」

「はい、もちろん。蒼真、お願いして良いかな?」

「うん、分かった……」

蒼真が擬人化を解いたのを確認する。

ゴジカさんはニャオニクスを呼ぶべく、1度バトルフィールドを後にした。


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