07



「シャルロット・シュヴァリエ・レオンハルト……。私の、本当の名前……」



不思議とそこまで驚きはしなかった。

でも確かに自分の中でストンと腑に落ちる感覚がして、思わずその場にへたり込んだ。

雅たちが慌てて駆け寄ろうとするのを制し、何とか自力で立ち上がる。

「ア、ハハ……やっぱり、そうだったんだぁ……」

「フユカ……?」

「緑炎、黙っててゴメン。ゴジカさんの言う通り……何度かレティシアさんの声を聞いたことがあるんだ、私」

私は孝炎だけに話していた、あの夢のことをみんなに話して聞かせた。

私に本当の自分を取り戻すべきだと言ったのも、味方であることだけは忘れないでと言ったのも……全部レティシアさんの声だったんだって。

「そうか……」

「あんまり驚かないんだね? 私も大して人のことは言えないけどさ」

「今だから言うが、俺はお前がシャルロット本人だってことに気付いてた。
お前自身が気付き始めるよりも前からな……」

「えっ……」

緑炎の口から放たれた言葉に、私はつい呆気に取られてしまう。

気付いてた? 私よりも早くに?

「どうして? 確かにそっくりだとは聞いてたけど、それだけで本人だなんて……」

「確信を持ったのはミアレジム戦の次の日だ。
孝炎から奥方……レティシアさんの魂が、まるでお前に寄り添うように傍にいるって聞かされてたんだよ」

「緑炎、あなたにもまた……姿は見えずとも寄り添う魂がいます」

「俺にも?」

「えぇ。栗色の髪の男性……あなたの進む道を見守り続けてきたようですね。
親心……それに罪悪感が少しというところでしょうか。
#name1#さんに寄り添う女性の魂と一緒に、今あなた方を愛おしそうに抱き締めていますよ」

「……! まさか……テオさん……?」

ミアレジム戦の翌日、孝炎のブラッシングをしながら彼と話をしたのを思い返す。

あの時、何かに気付いた孝炎が私の後ろをジッと見つめていた。

"悪霊の類ではない。アレはむしろそなたを守ろうとするモノだ"

孝炎は確かにそう言っていた。

私に寄り添うレティシアさんの魂と、緑炎に寄り添うテオドールさんの魂。

彼らは死してもなお、ずっと私たちの傍にいてくれてたんだ。

例え姿が見えなくても、声を届けられなくても……それでも親として見守ってくれてるんだ。

これまでも……今この時でさえも……。

「……」

頬を伝いそうになる涙を何とか堪える。

隣からスンと小さく音がして、そっちへ振り向く。

でも私の視界は大きな手に遮られた。

「……見んな」

ボソリと呟かれたその声は震えていて。

私たちはしばらく身を寄せ合って、両親を想いながら静かに涙を流した。


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