04
「今より800年ほど前のこと。
イベルタルと呼ばれるポケモンが禍々しい翼を広げてカロスの大地を包み込んだ途端、辺りの人もポケモンもバタバタと倒れていった……。
イベルタルは鋭く叫ぶといずこかへ飛び去って行ったと伝わっておる。
なんでも1000年の寿命が尽きようとする時、エネルギーを蓄えるために周りの魂を吸い取ってしまう恐ろしいポケモンだそうな」
「……」
まるで物語の語り部のように、おじいさんはスラスラと澱みなく言葉を紡いでいく。
私たちも聞き入ってしまい、固唾を飲んで続きを待った。
「3000年前のカロスで起きた戦争に現れたポケモンが無数の魂を喰らったとも伝わっており、それをイベルタルだと考える人もいるそうだよ。
そしてエネルギーを蓄えたイベルタルは、まるで繭のような姿となって山奥に潜んでいる……。
これがイベルタルについての伝承だよ。
じゃあ次は、ゼルネアスについて話して聞かせようかね」
ゼルネアス……生命を司る、イベルタルの対になるポケモン。
博士と水姉さんから少しだけ聞いたけど、どんなポケモンなんだろう?
「こちらも800年ほど前のこと。
ゼルネアスと呼ばれるポケモンが煌めくツノを広げてカロスの大地を照らした途端、辺りの人もポケモンも体に活力が漲った。
そしてゼルネアスを中心に深い森が広がったと伝わっておる。
ゼルネアスは1000年の寿命が尽きようとする時、自分の持つエネルギーを周りに分け与えるありがたいポケモンだそうでな。
3000年前の戦争で傷付いたポケモンたちを救った、とも伝わっておるよ。
そしてエネルギーを分け与えたゼルネアスは、枯れた大木のような姿となって森の奥で身を潜めているそうな。
……以上がカロスに伝わる伝説のポケモンの話だよ。何かのお役に立てたかな?」
「はい、興味深いお話ありがとうございました」
おじいさんにお礼を言って、家を出る。
黙々と道を歩きながらさっき聞いた話を思い返した。
あまりにも真剣な顔でもしていたのか、みんなも無闇に声を掛けてくるようなことは無い。
それが今はとてもありがたかった。
(ゼルネアスとイベルタル……カロスの戦争……)
おじいさんの話の中で共通することがあるとすれば、それは"3000年前"ってキーワードだろう。
(3000年前、か……)
以前シャルルさんが聞かせてくれた話を思い出す。
レオンハルト家は3000年も昔から、先祖代々最終兵器の番人となってきたんだって。
最終兵器のあまりにも強大過ぎる力を悪用させないためだ、っていうのは分かるんだけど……。
だとしてもレオンハルト家とイベルタルの関係性が、まだ繋がって来ない。
だって単に最終兵器を使わせないようにするだけなら、テオドールさんが命を落とさなければならない理由は無いはずなんだ。
(……やっぱり、行くしかないか)
ヒャッコクシティでの滞在を終えたら、もう1度行かなくちゃ。
レオンハルト邸のある、セキタイタウンへ−−。
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