02

マンムーに乗って雪山を越え、前方に大きな街並みが見えてきた。

海沿いにはとても大きなクリスタルが設置してある。

まるで街の象徴であるかのような、圧倒されるオーラを遠くからでも感じた。

17番道路での吹雪は何処へやら、空と海は夕焼けに照らされてオレンジ色に染まっている。

「わぁ、綺麗ー!」

『この辺りは吹雪いていないようでよろしゅうございましたね、姫』

『空も海も全部オレンジ色に染まって……。緑炎、ここがヒャッコクシティなのですか?』

『あぁ、間違いねぇ。ヒャッコクシティといえばあの日時計だからな』

「日時計?」

『海沿いにデカい水晶があるだろ。あれがこの街を象徴する日時計だ』

あれ日時計だったんだ!?

花時計は見たことあるけど、あんなに大きな日時計初めて見たよ!

『? 蒼真、ソワソワしてどうしたの?』

『……』

「わっ、えっ!? ちょっと蒼真!」

突然モンスターボールから飛び出した蒼真が擬人化し、一目散に走っていく。

彼の向かう先も分からないまま、ひたすら後を追いかけた。



「ハァ……ハァ……。や、やっと追いついた……」

ヒャッコクシティの街中を全力疾走すること数分。

やっとの思いで追いついた場所は、あの日時計のある場所だった。

肩で息をする私とは正反対に、蒼真は息ひとつ乱すことなくジーッと日時計を見上げている。

「ダメだよ蒼真、いきなり走り出したりしたら!
初めて来る街だし、誰かにぶつかったりしたら危ないよ」

「あ……。うん、ごめんフユカ……」

『この日時計がどうかしたのか、蒼真?』

「……この日時計、何か不思議な力を感じる」

確かにどこか圧倒されるようなオーラみたいな雰囲気は感じるけど……。

蒼真の言うような、不思議な力? は私には感じ取れなかった。

『あぁ……確かここってパワースポットになってなかった?』

「パワースポット?」

『俺も噂で聞いただけなんだけどさ。この日時計のエネルギーを浴びると願いが叶うとか、良いことが起こるとか……。
まぁ、後付けの話だとは思うけどねぇ』

緑炎は何か知らないわけ? と龍矢が緑炎に聞く。

龍矢と同じくカロス中を旅して回ってた彼なら、他にも色々知ってるかな?

『パワースポットになってるのは知ってるが、他に俺が知ってることといえば歴史的な言い伝えだけだぞ。
この日時計は3000年前に急遽飛来したとか、ポケモンの力で作り上げられたものだとかなんとか……。
少なくとも、現代の技術では作ることも壊すこともできないらしいぜ』

うーん、1言で言うならオーパーツって感じなのかな。

でもこんな大きな水晶が飛んで来るってちょっと怖い……。

「みんなは、この日時計の不思議な力って感じてるの?」

『うーん……僕はよく分かんないや』

『実は私もよく分かりませんの。見た瞬間に圧倒されるような雰囲気は感じたのですが……』

「あー、やっぱり?」

蒼真がエスパータイプだからこそ感じ取れるものなのか、それとも単純に私たちが鈍いのか。……前者であると思いたい。

日時計の奥に見える海を眺めている私たちの後ろで、蒼真は1人ずっと日時計を眺めていた。


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