05

何だか最近は泣いてばかりだな、なんてどこか他人事のように思いつつ……スンと小さく鼻をすすった。

ちょうどそこでポケモンセンターに戻ってきた烈たちが入ってきて、水姉さんに"誰がフユカを泣かせたの"って詰問される。

"今なら怒らないから申し出なさい。凍らせる程度で済ませてあげるわ"ってニッコリ笑う水姉さんに誤解だと伝え、何とか宥めた。

だって背後にブリザードが吹いてるみたいな笑顔だったし、私の手持ちポケモンに氷タイプは鬼門だし。特に龍矢。

「あ、そういえばあのユキノオーはどうなったの?」

フレア団のモミジに追い詰められていたユキノオーを思い出し、ふとどうなったのか気になってしまう。

それに対して烈が"安心しろ"って返した。

「あのユキノオーなら隙を見て安全な場所に避難させた。
お前に伝言だ。"助けようとしてくれてありがとう"ってよ」

「え? 助けたのは私じゃなくて烈たちなのに?」

そのお礼は、烈たちに向けられるべきなんじゃ……。

私といえば正直、自分が捕まらないように戦うので精一杯だったんだけど。

「あのユキノオー、フレア団とのバトルで足ケガしててな。
お前が割って入ったことで、あれ以上のダメージを負わなくて済んだんだよ」

「な、なるほど……?」

つまり私がモミジとバトルを始めたことで、ユキノオーから目を逸らすことに繋がった訳か。

でもケガしてるのはちょっと心配だな。

相手は炎タイプのヘルガーだったし、相性では不利な立ち位置だっただろうから。

「フレア団? 何だってフロストケイブになんていたんだ?」

「そういえばあのモミジって女の人、ユキノオーがすごいエネルギーを秘めてるって言ってたよ。
私には強そうなこと以外、何も分からなかったけど」

「そのことだけど……どうやらあのユキノオー、メガストーンを持っていたみたいなの。
あなたへのお礼にって預かったから、渡しておくわね」

「そっか、メガストーン持ってたんだね。……えっ、メガストーン!?」

ついしれっと聞き流しそうになったけど、そんな貴重なもの持ってたのユキノオー!?

水姉さんから私の手にメガストーンが渡される。

ユキノオーが持ってたってことは"ユキノオーナイト"なんだよね、コレ。

「お、お礼にって言われても……。
私ホント何もしてないし、ユキノオー連れてないから宝の持ち腐れになるような……」

「ユキノオーは"感謝の印"としてくれたんだろ?
そのこと自体に意味はあるんだし、無理に活用しようとしなくて良いんじゃない?」

「そういうものなのかな……?」

とは言っても貴重なものであることに変わりはないので、カバンの中に大事にしまった。

「フユカ、悠冬の様子はどうですか?」

「今はまだ治療中だよ。蒼真がついててくれてるし、目を覚ましたら知らせてくれるって」

そう言ったところでパタパタと足音が聞こえてくる。

ガチャッとドアを開けて入ってきたのは、肩で息を切らした蒼真。

ちょうどドアの近くに立っていた龍矢の脇腹に、ドアノブがクリーンヒットした。

「グフッ!?」

「フユカ……! 悠冬、目を覚ましたよ……!」

「本当!? 何番室!?」

「7番室にいる……!」

「蒼真……せめて開ける前にノックしてくれ……」

みんなが一斉に部屋を出て、悠冬がいるという7番室へ向かった。


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