07
「♪この星の同じ時代に 生きる人と出会うこと♪
♪宇宙の時の中では たった100年 奇跡の出会い♪」
水姉さんの口から紡がれる旋律が、恐怖に強ばった体を解してくれる。
ふと私はこの歌を聞いたことがあるような気がして、不思議と続きの歌詞を口ずさんでいた。
「♪小さな蕾奪い合わずに ともに守り育んでいこう♪
♪咲いた花に優しさ添えて 送り合えば心繋がる♪」
隣で歌っていたはずの水姉さんの声が聴こえなくなる。
不思議に思って振り向くと、水姉さんが目を見開いて私を見ていた。
「水姉さん……?」
「フユカ……あなたどうしてこの歌を知ってるの?」
一瞬、水姉さんが何を言ってるのかすぐに理解できなかった。
でも彼女のその表情は本物で、純粋に疑問を投げかけている。
「どうして、って……。
たぶんどこかで聴いて、何となく頭に残ってたのかも。
どこで聴いたのかは……よく思い出せないけど」
「どこかで、なんてそんなはずないわ!
だってこの歌は私があの子に……"シャルロット"にしか歌ったことがないんだもの!
私とシャルロットしか、この歌のことは知らないはずなのよ!」
「……え……?」
私たちの周りだけ、時間が止まった気がした。
他の人は、この歌を知らない……?
じゃあ……どうして私は……。
「……ッ!」
逃げ出すように背を向けた私の手を、再び水姉さんが掴む。
「待ってちょうだい、フユカ! あなた、まさか……まさか本当に……」
「やめて!!」
思わずそう叫んだ。
もうこれ以上、何も聞きたくない……!
「私は私以外の何者でもない! シャルロットさんじゃない!
そのはずなんだよ……!」
「フユカ……」
「水姉さん、手を離して……。今は誰とも会いたくない。
お願いだから、1人にさせて……!」
追い縋ろうとする水姉さんに向かってピシャリと言い放つ。
力無く下ろされたその手を振り払い、私は彼女を振り返ることなく走った。
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