06

町の人たちが何事かと振り返るのも構わず、私は走った。

その後ろを必死に水姉さんが追いかけて来る。

緑炎は博士と一緒にいるのか、なんて考える心の余裕は無い。

身の危険を感じるような恐怖心からとにかく逃げたくて、ただひたすらに……がむしゃらに走った。

次第に足が疲れてきて速度も落ちてきた頃、水姉さんが私の手を掴んだ。

「……ハァ……ハァ……、やっと追いついたわ……」

呼吸は乱れ、2人揃って肩で息をする。

どこからか流れ込んできているらしい冷気が、私たちの息を白く凍らせた。

「フユカ、どうしていきなり走り出したの? 何があったの?」

「……知らない……私は、何も知らない……。
水姉さん……私、怖い……。怖くて、怖くて……頭がおかしくなりそう!」

「大丈夫。大丈夫よフユカ、何も怖がらくて良いわ。
あなたには私がついてるし、緑炎たちもいる。1度深呼吸しましょう、ねっ?」

水姉さんが背中をさすってくれ、それに促されるまま何度も深呼吸した。

「……落ち着いた?」

「う、うん……何とか。でも、まだ何か怖い……。
具体的に言えないけど、今にも叫び出してしまいそうで……」

少しでも油断すると過呼吸になってしまいそうになるのを何とか抑え、ポツポツと口を開く。

水姉さんは"じゃあ歌を歌ってあげるわ"と言って、私をベンチに座らせる。

自分も隣に腰掛けると、綺麗な旋律を紡ぎ始めた。


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