01
木々や廃墟の並ぶ道を更に歩くこと数十分。
前方にたくさんの風車が回る町が見てえきた。
「着いたな。ここがフウジョタウンだぜ、姐さん」
「わぁ、風車大きい!」
心地の良い風がサアッと音を立てながら町を駆け抜けていく。
"綿毛舞い飛ぶ 風の町"−−そのフレーズに違わない、のどかで良い町だ。
「風が気持ち良いですね」
「だな。俺もこういう雰囲気は嫌いじゃねぇ。
……変わんねぇな、この町も」
ニコラさんがポツリと呟いたその言葉に、思わず首を傾げる。
それを見た彼は小さく頬を掻きながら口を開いた。
「俺は元々この町の生まれなんだ。
あんまり良い思い出は無ぇし、嫌なことも思い出しちまうけど……それでも、ガキの頃を過ごした場所だからな。
少なからず愛着はある」
そっか、ニコラさんはこの町の出身なんだ……。
ここでお母さんと妹さんと、3人で暮らしてたんだな。
テオドールさんの日記を見る限り、決して裕福ではなかったみたいだけど。
それでもここが、この町が彼の故郷なんだ。
("故郷"、か……)
私にとっての故郷はあの孤児院だと思ってたし、今でもそう思いたがっている自分がいる。
時々私に話しかけてくるあの女の人の話を、受け入れられない。
だって受け入れてしまえば、私とシャルロットさんが同一人物ってことになってしまう。
今いる"フユカ"という私が、無かったことになってしまいそうで……それが怖い。
「姐さん? どっか、具合でも悪いのか?」
「えっ……あ、大丈夫です。心配かけてごめんなさい。
それより、ニコラさんに1つ聞きたいことがあるんですけど」
「お、おう……?」
「ニコラさんはこの町の生まれなんですよね?
ポケモンの技を忘れさせてくれるおじいさんの家、知ってたりしないかなーなんて」
ニコラさんは"あぁ、あの爺さん婆さんの家か"とすぐに合点が行ったみたいで、迷いの無い足取りで道案内をしてくれた。
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