09
その日の夜、私は夢の世界にいた。
場所はどこかの山の頂上みたいで、テオドールさんがシャルロットさんの手を引いて歩いている。
(この場所はどこなんだろう? カロスにこんなに高い山なんてあったっけ?)
テオドールさんは何も言わずに歩いていき、やがて遺跡の跡地のような場所で足を止めた。
"来たぞ 、 !"
テオドールさんが何か名前のようなものを叫んだ気がしたけど、肝心の部分はノイズのようなものが掛かって聞き取れなかった。
彼の声が届いたのか……シャルロットさん親子の目の前に、小さくて黄色いポケモンと薄いピンク色の大きなポケモンが姿を現す。
どちらも見たことの無いポケモンだった。そもそもあの2匹は、カロスに棲むポケモンなんだろうか?
シャルロットさんが不安そうな声で"おとうさん……"とテオドールさんを呼ぶ。
彼はシャルロットさんと目線を合わせるために膝をつくと、その小さな両肩に手を添えた。
"シャルロット、俺はこれから大事な仕事があるんだ。
俺がここに戻ってくるまで、このポケモンたちと一緒に待っててくれるか?"
"緑炎は? 緑炎もいっしょがいい!"
"緑炎には俺の仕事を手伝ってもらいたいんだ。仕事が終わったら、必ず緑炎と一緒に迎えに来る。
だからそれまで……良い子で待っていてくれるな?"
シャルロットさんがコクリと頷くと、黄色いポケモンが遊びに誘うかのように笑って彼女の手を取った。
でも黄色いポケモンの目を見た瞬間、シャルロットさんは気を失って倒れる。
テオドールさんはそれをしっかりと受け止めると、彼女の手に何かを握らせてそっと抱き締めた。
"すまないシャルロット、父さんとはここでお別れだ……。離れ離れになろうと、俺はお前を愛しているよ……"
そう呟いたテオドールさんは、ピンクの大きなポケモンにシャルロットさんを渡す。
2匹のポケモンはそのまま、空間の裂け目のようなものの中へ消えていってしまった。
(どうしてシャルロットさんを裂け目の向こうに……? それに、お別れって……?)
困惑している私を他所に、夢のシーンは進んでいく。
"シャルロット、お前は幸せに生きろ。
この世界でのことを何もかも忘れて、新しい自分として……フユカという人間として生きていくんだ"
(…………え?)
彼の口から紡がれた自分の名前に、私はただ呆然とすることしかできなかった……。
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