05




「えっ、と……どういうこと?」



彼の話に頭がついて行かず、思わず沈黙してしまう。

一瞬のような、思ったより長いような時間の後で私はようやく口を開いた。

「私の歌は他者を攻撃してしまう。
こうして人の姿を取っている間は問題無いのですが、本来の姿でいる時……特にバトルの時の歌は望まずとも周りを巻き込んでしまうのです」

バトルって、ポケモンバトルのことで間違いないよね?

なんでその時だけなんだろう……。

「かつて私は災いの気配を感じ取り、あの町へ向かいました。
そこで町の住人の差し向けたポケモンたちが襲いかかってきたところを……私は歌だけで壊滅させてしまった」

"あのポケモンたちには何の罪も無かったというのに……"と、白刃は暗い顔でそう零した。

白刃もその後の記憶が無いと言うから、バトルの結果だけを見ればおあいこだったんだろうけど……。

というか、それがもしポケモンの技だとしたら聞いたことがあるような気がする。何だったっけ?

「私の歌は、言わば呪い。自分の意思とは関係なく他者に危害を加えてしまう。
あの日私に向けられた敵意や私自身の後悔が作り上げた、永遠に逃れることのできない鎖なのです。
貴女が私の歌を聴いたのが、人の姿の時で本当に良かっ……!?」

「……」

なんて悲しいことなんだろう……。

私は白刃にも龍矢にもなれないし、彼らがその時心に抱いた感情を同じように感じ取ることはできない。

だからこそ、彼らのために何もしてあげられない自分が情けなかった。

2人が辛い過去を持っていたことも。そのために葛藤し、苦しみ続けてきたことも……何も知らずにいた。

私は2人について、あまりにも無知だった。そしてその悔しさは涙となって頬を濡らす。

「ひ、姫!? 私は、自分の知らぬ間にとんでもない無礼を!?」

私はひたすら嗚咽を我慢しながら首をブンブンと横に振る。

やっとの思いで絞り出した声は、滑稽なほど震えていた。

「……ごめん。私、白刃のこと知ってるつもりになってた。
コウジンタウンで出会ってから、ここまで一緒に来てくれたんだもん。
でも私は白刃の上辺だけ知って、勝手に満足してたんだね。
白刃のことも龍矢のことも……深く知ろうとしなかった」

「いえ、決してそのようなことは……!」

「そんなことあるの。
そりゃあ踏み込んで欲しくないことまで聞き出そうとは思わないけど、それでも私はちゃんと知らなきゃいけなかった。
だからありがとう白刃、自分のことを話してくれて。歌のことはみんなで一緒に考えようよ」

「……ありがとうございます、姫。私はこれからもずっと、貴女のお側に」

彼が自分の歌声を呪いだと言うのなら。みんなで一緒に呪いを解く方法を探せば良いんだ。

例え解けなくても、その歌声がどんなものなのか知っていて損は無いはずだよね。


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