04


「ところで姫、私に何かご用でしょうか?
何やら難しいお顔をしていらっしゃるようですが……」

「あぁー、うん。龍矢のことでちょっとね」

全員があの場にいたから、白刃も私の言わんとすることをすぐに察してくれる。

私の言葉を遮ってまであんなことを言ったのは、きっと何か理由があるに違いなかった。

「あの時、龍矢は"自分で自分を許せなくなる"と言っていましたが……」

「そうだね。あの言葉の真意を、私には汲み取ることはできないよ。
でも、もしかしたら……自分の心を過去に縛り付けちゃってるのかも」

「過去ですか……」

「私の憶測でしかないけどさ、過去に辛い経験……龍矢の場合は女性が関係することで何かトラウマを抱えてるのかもね」

「己の、過去……」

白刃が隣でポツリと呟いたかと思うと、"姫"と私を呼んだ。

彼は紅い瞳で真っ直ぐ私を見つめて、"貴女だからこそお話しするのですが……"と口を開いた。

「私がコウジンタウンの住人たちから良く思われていなかったことを、覚えておいでですか?」

「うん、もちろん覚えてるけど……それがどうかしたの?」

「あの町に住む者たちにあそこまで敵意を向けられていたのは、元々私の責任なのです」

「え?」

確かにあの町の人たちは白刃……つまりアブソルに好意を向けることは無かった。

町から追い出そうと計画するあたり、彼が町に姿を現すことを快く思ってないみたいだったけど……。

でもそれはアブソルについての学説が浸透してなかったからこその誤解であって、彼が負い目を受けることはないはずだ。

「私が姫に忠誠を誓ったあの日、貴女に1つだけ願いを聞いていただきました」

彼の言う"願い"……それはポケモン図鑑で自分のステータスを見ないでほしいというものだった。

自分のポケモンのポテンシャルや、使える技を確認できると聞いて蒼真をスキャンした時に確かに言われた。

あまりにも真剣に頼み込んでくるものだから、触れてほしくないことなんだろうと思って承諾したんだけど……。

「うん、それも覚えてるよ」

「私が住人たちに快く思われていなかったことと、己のステータスの開示を拒んだ理由……。
それらの原因は私の"歌"にあるのです」


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