03

フカフカのベッドの上で、ハッと目を覚ます。

目の前に映ったのは、今ではもう見慣れた研究所の天井だった。

体を起こしてぼんやりとさっきの夢のことを考える。

あの声は私をシャルロットと呼んだ。"フユカ"ではなく、"シャルロット"と。

それに思い返してみれば、あれは間違いなくセキタイの遺跡で聞いた声だった。

シャルロットさんだと思っていたあの声は、どうやら違う人らしい。

(じゃあ……あれは誰?)

水姉さんのものとはまた違う、優しい声。

困惑する頭をブンブンと振って、私は身支度を始めた。



部屋を移動すると、全員が揃っていた。

「あっ、フユカ! おはよー!」

私の存在にいち早く気付いた悠冬が、満面の笑みで朝の挨拶をする。

その声につられて、他のみんなも私に気付いたみたいだ。

「おはようございます、フユカ。昨日はよく眠れましたか?」

「……うん、おかげ様で」

「それは良かった。朝食はできていますから、冷めないうちにどうぞ」

「ありがと」

"僕フユカの隣が良い!"と言って私の腕を引く悠冬。

私はされるがまま彼の席の隣に座って朝ご飯を食べる。

いつもならみんなと"美味しいね"って言いながら食べるのに、今朝は夢のことがチラついて食が進まなかった。

「どうしたのフユカちゃん? 俺の作ったサンドイッチ、口に合わなかった?」

「んぇ!?
あ……だ、大丈夫! ちゃんと美味しいよ?」

「そう? なら良いけど……」

「昨晩、何かあったのだろうか?
眠れたと言う割には、些か元気が無いように思えるが……」

全員の視線が一斉に私へ向けられる。

夢のことを話そうかとも思ったけど、みんなに心配は掛けたくなかった。

「何でもないよ。もしかしたら、昨日の気疲れがまだ残ってるのかも」

何とか笑顔を作ってそう答える。

ふと、真顔で私を見つめる赤い瞳と視線が合った。


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