07
シトロン君とのバトルも終わりが近付いてきた。
私は相棒の緑炎を繰り出し、シトロン君もエースポケモンであろうエレザードを繰り出す。
相性では私たちの方が優勢だけど、油断はできない。
エレザードは軽やかなステップでこっちの攻撃を躱し、緑炎も持ち前のスピードで相手の攻撃を瞬時に躱していく。
エレザードがダンサーの動きなら、緑炎は忍者って感じかな。
「草結びで足止めしてください!」
「リーフブレードで刈り取って!」
どちらも譲らない、一進一退の攻防が続く。
でもここで勇み足になっちゃダメだ。最後まで冷静でいなきゃ。
「10万ボルト!」
「エナジーボール!」
10万ボルトとエナジーボールが激しくぶつかり、小爆発によって煙が巻き起こる。
これを使わない手はない。
「緑炎、穴を掘る!」
『あぁ』
視界が晴れると同時に緑炎が地中に身を潜める。
エレザードは突然目の前の相手が消えたことに、少し動揺しているみたいだ。
『えっ、どこ行ったのアイツ!?』
「どこから来るか分かりませんよ。気を付けてください、エレザード!」
「これで決めます! 緑炎、やっちゃって!」
地中から現れた緑炎に背後を取られたエレザードは、そのまま弱点を突かれてバトルフィールドで目を回した。
「エレザード、戦闘不能! ジュプトルノ勝チ!
ヨッテ勝者、チャレンジャー・フユカ!」
シトロン君が発明したという審判ロボットが、高らかにジム戦の終わりを告げる。
緑炎をボールに戻して労っていると、観客席から降りてきた水姉さんに思いっ切り抱き締められた。
「おめでとう、フユカ! あなたなら勝てるって信じてたわ!」
「ちょ、水姉さん、気持ちは嬉しいけど苦しっ……」
「フユカさんとお姉さん、仲良しなんだね!」
「仲良しっつうより、ただのシスコンだろ゛っ!?」
「あーらごめんなさい、手が滑ったわオホホ……。
あと龍矢、さっき言ってた"デート"について詳しく聞かせてもらおうかしら?」
『あっ、何か急に背筋が寒く……』
「それは良い。水恋、この節操無しを1から叩き直してやってくれ」
「任せなさい。私の前で"デート"だとか"フユカの彼氏"だとか2度と言えなくしてあげるわ」
『助けてフユカちゃん! 氷漬けにされちゃう!』
「程々にしてあげてね、水姉さん……」
賑やかな(騒がしいとも言う)やり取りに、シトロン君が思わず噴き出す。
それに釣られて、その場にいる全員に笑顔が広がった。
「フユカさん、今日は楽しいバトルをありがとうございました。
これがミアレジムを勝ち抜いた証・ボルテージバッジです。受け取ってください」
「ありがとう! 私もとても楽しかったし、色々と勉強になったよ」
「ユリーカ、フユカさんとお友達になりたい!
だから、また遊びに来てね!」
「うん、もちろん! 次に来た時はいっぱいお話しようね」
貰ったバッジをケースにしまって、ミアレジムを後にする。
帰り際シトロン君にあることを耳打ちすると、彼は"何で知ってるんですか!?"と顔を真っ赤にした。
いつか行けると良いね。"ライモンの遊園地"。
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