06
「まさか地ならしを覚えさせていたとは……。
僕もまだまだですね。岩タイプのポケモンが地面技を覚えるのはよくあることなのに、それを失念していました」
でも次はそうはいきませんよ、と言いながらシトロン君が繰り出したのはエモンガだ。
彼のポケモンはエモンガを入れて2体。ボルトチェンジは要注意だね。
悠冬に労いの言葉をかけてボールへ戻し、次のボールを手に取る。
「初めてのジム戦だけど、お願いね。龍矢、Sasir la victoire!」
『任せといてよフユカちゃん。女の子相手じゃなければ、俺頑張るからさ』
"ところでジム戦終わったらデートしない?"って言ってきた龍矢に、"ジム戦に集中してよ!?"と釘を刺す。
自然な流れでサラッと言ってくるから、気を付けとかないとうっかりOKしてしまいそうになるんだよね。
恐ろしい子……。
「そろそろエレキフィールドの効果が切れる頃ですね。
ですがその前に……エモンガ、プラズマシャワーです!」
『任せて!』
「プラズマシャワー?」
初めて聞くけど、どんな技なんだろう?
するとボールの中で緑炎が"げっ"と声を上げる。
『プラズマシャワー……厄介だな。
気を付けろよフユカ、あの技はノーマルタイプの技を全部電気タイプに変えちまうぞ』
「うそ、そんな技があるの!?」
だったら龍矢が技を受けるのはまずい。
さっき燕返しが直撃したばかりだし、何か良い方法は……。
『大丈夫だよフユカちゃん。焦らない、焦らない。
俺が覚えてる技、よーく思い出してごらん?』
龍矢にそう諭されて彼の使う技を思い出してみる。
鋼の翼と、メロメロと、シャドークローと……あっ!
「そっか、そういうことね。じゃあいくよ龍矢、"羽休め"!」
『オッケー!』
羽休めは自分の体力を回復させると同時に、そのターンの間だけ飛行タイプじゃなくなる技。
龍矢の場合はドラゴンタイプ単体の扱いになるから、電気技を半減させるにはもってこいってわけだね。うっかりしてたよ。
「羽休め……面白い技を使いますね。
ですがこれで決めます! エモンガ、電光石火!」
「躱して!」
エモンガをギリギリまで引き付け、絶妙なタイミングでヒラリと躱す。
「そのままシャドークロー!」
『悪いけど勝たせてもらうよ。デートがかかってるからね!』
かかってません! と心の中でツッコんで、バトルの行方を見守る。
目を回して倒れていたのは、エモンガの方だった。
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