02

(うーん……。フユカさんのあの様子……間違いなく僕のせいだよね)

"君のことを見定める"なんて言い方をしなければ良かったと少し後悔した。

あそこまで緊張させるつもりは全くなかったのだ。いや本当に。

気負わずにとは言ったけれど、優しくて真面目な彼女のことだ。僕を失望させないようにと思い詰めた結果、あぁなってしまったのだろう。

その時、ガチガチに固まる彼女の元へ寄り添う影があった。

(あれは、水恋……?)

水恋は彼女の肩にそっと手を置いて、穏やかな笑顔で語り始めた。

「フユカ、まずは1度深呼吸しましょう」

水恋に促されるがまま、フユカさんが大きく深呼吸をする。

何度か繰り返した頃には全身の強ばりが抜けたみたいだった。

「心配ないわフユカ。
緑炎たちがいるのだもの。どんな時でも、"あなたらしさ"を忘れなければきっと大丈夫」

水恋の言葉に"ありがとう"と返すフユカさんの顔から、緊張の色がだいぶ薄れていた。

(何だか、かつての水恋とシャルロットを見てるみたいだな)

昔のことを思い出してしまって、つい頬が緩んだ。

「先のフユカの過度な緊張……。よもや、そなたに原因があろうとはな」

「え……」

いつの間に隣に立っていたのだろう。

すぐ近くに孝炎の顔があって、思わず仰け反ってしまった。

「どうしてそう思うんだい?」

「なに、我の目はごまかせぬよ。
セキタイの屋敷のことをフユカが聞いたと、緑炎から聞いてはいたのでな。
我が思うに……緑炎と行動を共にするあやつが、"アレ"を託すに相応しい者か見定めようと言うのであろう?」

孝炎の赤い瞳に光が揺らめく。彼にとって他者の心を読むことなど造作もないのだろう。

僕は降参の意味を込めて両手を上げる。彼はそんな僕を見てカラカラと笑った。


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