02
「義兄さんも、歴代のレオンハルト家の当主が背負ってきた宿命には逆らえなかったんだ」
「それは……"最終兵器の番人"のことですか? それとも、イベルタルに関係することですか?」
博士は一瞬だけ息を飲むと、"もうそこまで知っていたんだね"と零す。
「"どちらも"と言えば良いのかな。
最終兵器の番人と、破壊を司る伝説のポケモン・イベルタルの眠りを守ること。この2つが代々受け継がれてきた役目なんだよ。
義兄さんも……役目を果たして亡くなってしまった」
こんなに悲しそうに笑う博士を、私は初めて見た。
その姿がとても痛ましいものに見えてしまって、私にも彼の感情が流れてきているような錯覚さえ覚える。
小さめの作業テーブルの上で組まれている博士の手を、そっと包む。ほとんど無意識だった。
「フユカさん……?」
「何ですか? ……あっ!」
バッ! という音が聞こえそうな勢いで手を離す。
急に無言で相手の手を握るとか何やってんの私!? 明らかに変な人じゃん!
「すすすすみません! つい無意識で……嫌でしたよねホントごめんなさい!」
「ち、違うんだ! 嫌というわけじゃなくて、少し驚いただけで!
……君さえ良ければ、さっきのように手を握ってくれないかい?」
懇願するような顔で言われてしまっては断ることもできず、私は言われるがまま博士の手を握った。
「僕の姪も……シャルロットというんだけど、その子もこうして手を握ってくれていたんだ」
その名前にピクリと肩が跳ねる。
まただ。また私は、シャルロットさんしか知り得ない行動を無意識に取っている。
いや、今は考えても仕方ない。考え事してて聞いてませんでした、なんてことは彼に失礼だ。
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