09

賑やかなディナーを楽しんだ後のこと。

私はプラターヌ博士に頼んで、カロス地方に伝わる伝説や神話の本を読ませてもらっていた。

シャルルさんから聞いた物語に、あの謎の男性が呟いた言葉……。

(永遠の命を与えられた、花のポケモンかぁ……)

色んな文献を呼んでみたけど、どこにもそのポケモンの名前や姿らしき描写は書かれていない。

花のポケモンってことは草タイプなのかな?

ロゼリアとかキレイハナとか……あ、ポポッコの可能性もあるかも。

物語では、花のポケモンは王様の元を去ったらしいけど……。

(きっと、自分のために他のポケモンが犠牲になったのが……。
慕っていた王様が破壊の権化になってしまったことが、とても悲しかったんだろうな……)

そしてまた、王様も愛したポケモンが自分から離れてしまったのを深く悲しんだんだろう。

ふぅ、と小さく息をついて本を閉じると、目の前にプラターヌ博士が立っていた。

「やぁ、フユカさん。研究は捗っているかな?」

少し休憩にしよう、と差し出されたマグカップを、お礼を言って受け取る。

湯気の立つココアを1口飲むと、体の芯からポカポカと温かくなった。

「それにしても、カロスの神話や伝説に興味を持ってくれるとは嬉しいね。
旅の中で、何かきっかけがあったのかな?」

「実は、セキタイタウンにあるお屋敷に泊まった日のことなんですけど……。
そこの執事さんからカロスの王様の話を聞いて、それで気になっちゃって」

"お屋敷"の単語に反応した博士は、コーヒーを飲もうとした手をピタリと止める。

その瞳は驚きの色に染まり、その中にほんの少しだけ悲しさが見えた気がした。


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