09
「ありがとう、シャーリー。とっても楽しかった!」
シャーリーの元に駆け寄って、素直な感想を口にする。
彼女も少し興奮した様子で"私も楽しかった"と笑ってくれた。
するとニコラさんが何かすごい形相でシャーリーの近くまで歩いてきて、ガシッとその両肩を掴む。
シャーリーが"ヒッ!?"と息を飲む声が聞こえ、私も無意識に固唾を飲んだ。
「シャーリー、お前なぁ……。
あんなかっけぇポケモン連れてんなら、早く言えよ!」
「……え?」
ん? って思わず呆然としてしまった。
おぉ……。あんなに満面の笑みのニコラさんは初めて見たかも……。
「俺もキリキザンとダチになる前は、ガチゴラスも良いなって思ってたんだよなぁ」
小っせぇ家だったから無理だったけど、とニコラさんは言う。
その表情は、宝物を前に目を輝かせる少年のように澄んでいた。
「……へ、変じゃないですか?
私もガチゴラスのことは大好きですけど、とても女の子が持つようなポケモンでは……」
「んなこと気にしてたのかよ。
性別なんて関係ねぇ、好きなポケモンを持てば良いじゃねぇか」
ニコラさんのその言葉に、最初は驚いていたジョゼフさんたちも笑って頷く。
やっぱりみんな、最初から彼女たちのことを受け入れるつもりだったんだね。
「姐さんもそう思うッスよね?」
間髪入れずに"お客様にその口の聞き方は何だ!"ってジョゼフさんが叱りかけたのを笑って制する。
「うん、ニコラさんの言う通りだよ。
シャーリーはもっと自分に自信を持って良い。
あなたを認めて受け入れてくれる人たちが、ここにはたくさんいるんだから」
「……ありがとう、フユカちゃん。
皆さんも、こんな私ですけど……改めてこれからよろしくお願いします」
シャーリーもみんなも、その笑顔はとても晴れやかだ。
クロエさんが元気になった悠冬とガチゴラスを連れて戻ってくる。
"ガチゴラス、大人しくて良い子だったわよ"って笑っていた。
これでシャーリーが寂しさや悩みを抱えることは無くなると思う。
(良かったね、シャーリー)
彼女はもう、独りじゃない──。
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