04
「……え?」
蒼真の質問の意図が分からない。
彼が仲間になった頃には、すでに緑炎は私の相棒だった。
"そういう名前なんだ"って納得してるものだと思ってたんだけど……。
「ど、どういうこと?」
「シャルルから聞いたんだ……。
緑炎は10年以上前、1人で旅に出る前から"緑炎"の名前で呼ばれてたって……。
それなら"緑炎"っていう名前は、緑炎の探してる女の子がつけた名前ってことになるから……」
蒼真の言おうとしていることを理解した瞬間、頭をハンマーで殴られたような衝撃が走った。
初めて緑炎と会った日。私が彼につける名前を考えていた時、スッと浮かんできたのが"緑炎"という名前だった。
その名前を聞いたことがあるわけでもない、ましてやシャルロットさん親子と面識なんてあるはずがない。
それならどうして私はあの時、知らないはずの名前を自然に思い浮かべたんだろう?
どうしてその名前の響きを、"懐かしい"と思ったんだろう?
突然無言になってしまった私が返事に困っているように見えたのか、"ごめん、困らせるつもりはなくて……"と肩を落とす。
蒼真に慌てて"大丈夫だよ"と答えたけど、これでは自分が何者なのか益々分からなくなってきた。
でも、いつまでもここで頭を悩ませている訳にはいかない。
「ねぇ蒼真。……蒼真は、本当の私がどんな人間でも受け入れてくれるかな?」
蒼真は小首を傾げたけど、次の瞬間には"うん……"と答えてくれた。
「僕だけじゃない……。きっとみんな、同じ思いだと思う……。
だってフユカは、自分のために誰かが傷付くのを喜ぶような人じゃないから……。
フユカがフユカである限り、僕たちは一緒にいる……」
「……そっか、ありがとう蒼真。
よぉし、それなら頑張って調べ物しなくちゃね!」
「うん、行こう……」
蒼真が私の手を握って、優しく引っ張っていく。
旅を通して心も成長した彼の姿は、大人に近付いた青年そのものだった。
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