03
1人部屋に戻った私は、ベッドに座って窓の外を眺めた。
結局あれ以来、シャーリーさんには会えてない。
(次に会った時は、あの時のことをちゃんと謝ろう)
そう心に決めてベッドの上に寝転ぶ。
緑炎が見たら"だらしねぇ格好で寝んな"って怒るんだろうなぁと苦笑いしつつ、今度は天井を眺めた。
このお屋敷で過ごしていて抱いた懐かしさが何なのかを考えてみる。
でもすぐに答えが出るものではなく、考えれば考えるほど複雑な迷路に入っていくような感覚さえした。
(レオンハルト家の……シャルロットさんのことが少しでも分かれば、答えに近付けるのかな?)
1人でモヤモヤしていても仕方ない。いつもみたいに、気になるなら調べれば良い。
その後の私の行動は早かった。
書斎に入る許可をもらうべく、私はジョゼフさんを探す。
えっと……さっきソフィアさんから聞いた話だと、執務室にいるんだったよね。
朧気な記憶を頼りに歩いていると、向かいから誰かが歩いてくるのが見えた。
あの青い髪は……蒼真だ。
「あれ、蒼真? 悠冬と一緒じゃないの?」
「うん……。龍矢と一緒にお菓子作り教えてもらうって……」
そういえばそんなこと言ってたな。
悠冬は好奇心旺盛な子だし、物作りは良い経験になるかもしれない。
「そっかぁ」
「フユカは、何してたの……?」
彼の翡翠色の瞳がジッと私を見つめる。
ニャオニクスに進化してから大人っぽい顔つきになったよねぇ。
「私は執務室に行くとこだよ。ジョゼフさんに書斎に入って良いか聞きたくて」
「書斎……」
ポツリとそう呟くと、"難しい本ばかりだったよ……"と教えてくれる。
マジかとは思ったけど、それに尻込みしてたら何も始まらない。
まぁ名家のご当主の書斎だから、難しい本しかないのは少し考えれば分かったことだし。
「専門書とか読むわけじゃないから大丈夫だよ。
……知りたいと思ったんだ。レオンハルト家のことや、シャルロットさんのこと。
だから書斎に行けばこの家の歴史とか分かるかなーって」
「なら、僕も手伝う……。
僕も色々知りたい。このお屋敷の人たちがあったかい理由……」
それは本に書いていないのでは? と密かに首を傾げると、蒼真は"それに……"と続ける。
「フユカのことも、もっと知りたい……」
「え?」
「あの時のフユカの話は、本当なんだと思う……。
別の世界から来たってことも、嘘を言ってるように見えなかったから……。
じゃあ何でフユカは──
"緑炎の名前を知っていたの?"」
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