05

「あー、いたいた。おーい、シャーリー!」



別の方向から聞こえてきた声は、ニコラさんのものだった。

「ニコラさん、どうかしましたか?」

「シャルルさんが呼んでる。書斎の掃除を手伝って欲しいってよ……っと、取り込み中だったッスか?」

ニコラさんが私を見てそう言ったので、"そんなことはない"と返す。

「すみません、私が話に付き合わせちゃったんです。
シャーリーさん、お仕事中にごめんなさい」

「お気になさらず。
ニコラさん、シャルルさんには"直ぐに向かいます"と伝えてください」

「お、おぉ……?」

シャーリーさんは私に一礼して、足早にその場を後にする。

ポツンと残された私とニコラさんを静寂が包んだ。



「……昔からあぁなんスよね、アイツ」

「え、昔から?」

ニコラさんの話によれば、シャーリーさんはこのお屋敷の使用人さんの中でも最年少らしくて。

ここで働き始めた頃から、どこかオドオドしている子なんだそうだ。

「アンタとは歳も近いだろうし、仲良くしてやってくれるとありがてぇっス。
俺が相手だとビビられるっつうか……」

「もちろんです。私で良ければ喜んで!」

私の返事を聞いて、ニコラさんはニッと笑った。

意外と面倒見が良いんだね、ニコラさんって。

ヤンキーみたいな口調が残る言葉遣いだから、"馴れ合いはしねぇ!"ってタイプかと思ってたけど……。

人って見かけに寄らないね。

「それより、フユカ……様は何でここに?
……あ゛あ、やっぱ"様"付けとか性に合わねぇよ」

「私は別に呼び捨てでも良いですよ? ニコラさんも歳近そうだし」

「勘弁してくだせぇ! んなこと執事長にバレたら説教どころじゃ済まなくなっちまうんで!」



結局あーだこーだと2人で話し合った結果、"姐さん"に決まったのだった。何故……。


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