02


ジャンさんが作ってくれた朝ご飯を食べて、お屋敷を出る。

今日は町の散策だ。……とは言っても、見に行くのはストーンサークルだけなんだけどね。

「ジャンの作ったご飯、美味しかったね!」

「そうだな。もてなしの心が十分伝わってきた。
相当な努力を重ねてきたのだろう」

「昔から料理上手ではあったが、この10年で驚くほど上達したなアイツ」

ジャンさんは実家がレストランを経営していて、子どもの頃からそのお手伝いをしてたんだって。

"プロの料理人になることが、昔からの夢でした"って、ジャンさん言ってたっけ。

「まぁズミさんに弟子入りしたんなら、納得は行くけどな」

「"ズミさん"って?」

「有名な人……?」

「あ、その名前聞いたことあるわ。
カロスのどっかにレストラン経営してて、水タイプの四天王なんだっけ?
毎年三ツ星に認定されるほど実力のある料理人だって話だし」

そんなすごい人に料理教わってたんだ。味はもちろん、盛り付けも良いわけだね。

朝から高級フレンチのフルコースみたいなメニューだったもん。

「どの料理も美味しかったけど、あのレアチーズケーキ美味しかったなぁ」

「そうですわね。モモンのソースも甘さがちょうど良くて、紅茶にもよく合っていましたわ」

「へぇ。そんなに気に入ったんなら、戻ってからジャンに教わろうかな」

「仕事の邪魔しちゃダメだよ」

「大丈夫だって。その辺はちゃんと弁えてるよ」

「姫、"ストーンサークル"なる物はあれでしょうか?」

タウンマップを見ていた白刃に呼ばれてそっちを見ると、大きくて長い石が円を描くように並んでいるのが見えた。

元いた世界にあった、某国のストーン〇ンジみたいな場所だなぁ。

「そうみたいだね。流石に中までは入れないか……」

ストーンサークルの周りにはロープが張り巡らされていて、"関係者以外立入禁止"のパネルが立ててあった。

歴史的な価値のある場所かもしれないもんね。残念だけど、中の見学は諦めるしかないか。

そう思った時だった。

頭に軽い痛みが走る。それと同時に何か女の子の声が聞こえた気がした。



"思い出して……"



「誰……?」

思わずそう呟いた私に、みんなの視線が集中する。

「? どうした、誰も何も言ってねぇぞ」

「もしや、まだお疲れなのでは……」

「大丈夫……?」

「……うん、大丈夫だよ。心配かけてごめんね。
よし! 見るべき物は見たし、お屋敷に戻ろうか」

「はーい!」

みんなの後ろを追いかけながら、ふとストーンサークルを振り返る。

(さっきの声、誰だったんだろう? 私に何を伝えようとしていたの?)

どことなく自分の声に似ていたことには気付かなかったフリをした。


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