06
裏庭の散策を終えて、雅たちと1度分かれる。
玄関の方に向かって歩いていると、買い物から帰ってきた緑炎と鉢合わせた。
「あ、おかえり緑炎。買い物行ってたんだって?」
「おう。……1人か?」
「さっきまで雅と蒼真と悠冬と一緒に、裏庭を見て回ってたんだ。
ルイさんが、花の話を色々と聞かせてくれたよ」
「そうか。昔から花が好きだったからな、ルイは」
「あ、お帰りなさいませ緑炎様。
こちら、頼まれていた物をご用意しました」
私の後ろからルイさんが歩いてくる。
その両手には、グラシデアの花のブーケが抱えられていた。
フラワーアレンジメントも出来るなんてすごいなぁ。お花屋さん開けるよ、絶対。
「あぁ、戻った。忙しいのに悪いな」
緑炎が……花束? 意外な組み合わせに、つい呆然としてしまう。
「とんでもございません。私に出来ることであれば喜んでお手伝いいたします。
旦那様も奥様も、きっと喜んでくださいますよ」
あぁ、"彼女"の両親のための花束なんだね。納得した。
ルイさんが仕事に戻っていくのを見届けて、私は緑炎に向き直る。
「緑炎は、これからどうするの?」
「俺は2人の……テオさんと奥方の墓参りに行く」
「テオさんって、確か前にコルニちゃんも言ってた名前だよね?」
「あぁ、テオドール・シュヴァリエ・レオンハルト。
この屋敷の主人にして、アイツの……"シャルロット"の父親だ」
"シャルロット"……それが、緑炎が探し続ける女の子の名前。
(初めて聞いた……)
緑炎はいつも"アイツ"としか言わなかったもんなぁ。
"行くぞ"と言って裏庭に向かう緑炎の後を、慌てて追いかけた。
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