05
雅と一緒に裏庭に行くと、蒼真と悠冬が1人の執事さんとおしゃべりしていた。
あの人……さっき確か玄関でお出迎えしてくれた執事さんだ。
「蒼真、悠冬、ここにいたんだね」
「あ、フユカに雅……」
「ねぇ見て見て! お花がいーっぱい咲いてるよ。
ルイが全部育ててるんだって!」
"ルイ"と呼ばれた執事さんは、私と雅の方を見ると綺麗な姿勢で会釈する。
この世界の人たちって、ほんっと美形揃いだよねぇ。羨ましい……!
「お2人も散策ですか?」
「あ、はい。すみません、お仕事の邪魔しちゃって」
「構いませんよ。あとは水やりだけですから」
ルイさんはそう言ってニッコリと笑う。
そういえば、緑炎たちはどうしたんだろう?
「緑炎たちは一緒じゃないんだね」
「緑炎は買い物に行ってくるって。
白刃はジョゼフと一緒に しょさい? ってとこに行ったよ」
「龍矢は、白刃が連行して行った……」
れ、連行って……。
でもそうだね、ほっといたら絶対メイドさん口説きに行くもんね。
「それにしても、本当に素敵な庭ですね。心が洗われるようですわ」
「ありがとうございます、雅様。
そう言っていただけると、頑張って育てた甲斐があります」
ルイさんの後ろについて歩きながら、花の色んな話を聞いた。
話の節々からも、彼が本当に花が好きなことが伝わってくる。
そんな彼が愛情込めて育てるからこそ、ここの花たちは綺麗に咲くんだろうな。
「……あ、この花どっかで見たような?」
ふと視界の端に写った、ピンク色の花。
本で写真を見たような気がするけど、何て名前だったっけ?
「それは"グラシデアの花"です。
私も育てるのは初めてでしたが、上手く綺麗に咲いてくれて」
「確か、シンオウ地方ではメジャーな花なんですよね?
感謝の気持ちを伝えるために、この花をブーケにして渡してたって」
「その通りです、フユカ様。よくご存知ですね。
その風習を知った奥様に育てて欲しいと頼まれたのです」
「まぁ、素敵な風習ですわね」
「えぇ、私もそう思います。
お嬢様も、大変気に入って下さっていました……」
ルイさんが発した"お嬢様"というワード。
その声音の中にほんの少しだけ寂しい色を感じた気がした。
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