03
「ウフフ」
駅でカルネさんと別れ、モノレールに乗って街の北側に来た。
いつも使っている手帳を両手に大事に抱える。
開いた右側のページには、ついさっきもらったばかりのカルネさんの直筆のサイン。
ちなみに左のページにあるのは、プラターヌ博士の直筆サインだ。
『フユカ、嬉しそうだね』
『さすがはカロスの大女優だな。オーラが違うわぁ』
『何を言う、龍矢。
確かに彼女は美しいが、"愛らしさ"では姫に勝る者はいるまい』
「発言がどんどん水姉さんに似てきてない、白刃!?」
美しさも愛らしさもカルネさんが勝つに決まってるじゃん!?
カルネさんは特別だもの! あの人が宝石なら、私は道端に転がってる石ころだよ!
『あ、見えてきたよ……』
蒼真に言われて前方を見ると、今ではもう見慣れた建物が目に入る。
今日は良いことがありそうだと思ったけど、やっぱりジム戦前は緊張するなぁ。
「よーし、頑張ろうねみんな!」
『その前にその緩んだ顔を何とかしろ。ニヤニヤしながらジムリーダーの前に立つ気か』
おっと、いけない。ちゃんと気持ちを切り替えないとね。
両手でペンペンと頬を叩く。すると後ろから声を掛けられた。
「おや、ヒヨクジムに挑戦かな?」
声の主はニコニコと笑う表情がチャーミングなおじいさん。
手には大きなハサミを持っていて、それを杖のようにして立っていた。
「あ、はい! あの、ジムリーダーはいますか?」
「ジムリーダーなら君の目の前にいるよ」
「そうですか、"目の前に"……って、え!?」
この朗らかなおじいさんがジムリーダー!?
「ハッハッハ、驚いたかな?
私はジムリーダーのフクジ。君の挑戦を受けようか、チャレンジャー」
「はい、よろしくお願いします」
フクジさんの小柄な背中を追って、私はヒヨクジムへと足を踏み入れた。
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