09
「いやー、やっぱり平和的解決が1番だよなぁ。
女の子に手を上げるなんて、俺には無理だわ」
オンバットから人の姿になった龍矢さんが、真っ直ぐ私たちの方へ戻ってくる。
あまりにもトントン拍子で解決するものだから、開いた口が塞がらない。
「フユカちゃーん、おーい。
あれま、君も俺の虜になっちゃった?」
「……ハッ! た、助けてくれてありがとうございます!」
『一時はどうなるかと思ったが、助かった』
『助太刀に感謝する』
一部始終を見ていた雅たちも合流し、一気に賑やかになる。
龍矢さんは相変わらずの飄々とした態度で、"そりゃどういたしまして"と笑った。
「本当にありがとうございます。何もお礼出来ないのが残念ですけど……」
「お礼、ね……」
彼は私の顔をじっと見つめると、"じゃあさ"と呟いた。
「俺を君の仲間として連れてってくれない? それが今回の件のお礼ってことにしてあげる」
「え、それで良いんですか?」
「もちろん。"可愛い子は大歓迎"って言っただろ?
それに、アブソルを渡すまいって一生懸命な姿にグッと来ちゃってさー。
……本気で君を落としたくなった」
グイッと腰を引かれる感覚に、一瞬何が起きたのか分からなくなる。
龍矢さんの顔がすぐ近くにあって、ひゃい!? って変な声を出してしまった。
白刃がすぐさま擬人化を解いて私を引き離し、緑炎は龍矢さんの頭にゲンコツを落とす。
"い゛っ!?"って呻きながら、頭を抑えてしゃがみ込んでしまった。
「貴様……俺たちを助けたのは、最初から姫が狙いだったのか!?」
『よーしそこに直れ。次余計なこと言ったら丸坊主に刈り取ってやる』
「ち、ちょっと2人とも! 助けてもらったんだから乱暴はダメだよ!」
龍矢さんが小さな声で"ありがとね……"と言って立ち上がる。
「下心が無いって言ったら嘘になるけどさ。
でも君に連れてって欲しいのは本気。どう、フユカちゃん?」
「龍矢さんが本当に、私で良いと言ってくれるなら。
よろしくお願いします、龍矢さん!」
私が差し出した手を、彼は優しく取ってくれた。
握手を交わした後、擬人化を解いてオンバットの姿に戻る。
『こっちこそよろしく。
じゃあこれで正式に仲間になったんだし、龍矢"さん"と敬語は禁止な』
「ど、努力するよ……」
私の6匹目の仲間は、女の子が好きな"愛多きドラゴン"だった。
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