08

「ここは任せて、フユカちゃん」

「龍矢さん……?」

龍矢さんがゆっくりとエアームドの方へ歩いていく。

そういえば今気付いたけど、彼はポケモンを連れていない。

それどこか、モンスターボールすら持っていなかった。

どうする気なんだろう?

『あら、次はあなたが相手ですの? アタクシの好みではないのですけど』

「まぁそう言うなよ、つれないなぁ。俺もそこそこ良い男だと思うけど?」

『今はそこのアブソルが狙いですの。邪魔をしないで下さる?』

「そっか、それじゃあ仕方ないな」

龍矢さんの姿が変わっていく。彼が立っていたところにはオンバットが飛んでいた。

ポケモンだったの、あの人!?

『女の子とバトルはしない主義だったけど、フユカちゃんの悲しむ顔は見たくないからね。
俺の魅力の虜にしてあげようか、エアームドちゃん?』

『良いでしょう。2度とそんな口が聞けないよう、徹底的に叩き伏せてあげますわ』

エアームドが繰り出したラスターカノンのヒラリと躱し、オンバット……もとい龍矢さんは背後に回り込む。

『さぁ、食らってもらうよ。"メロメロ"!』

無数のハートがエアームドを囲み、ぶつかる。

その瞬間、エアームドの態度が一変した。

『まぁ! 小さくて愛らしいお顔なのに、とっても素敵ですわ!
オンバット様、アタクシをあなたのものにしてくださいな?』



「『『…………』』」



性格変わりすぎてない!?

あまりの変貌ぶりに私も緑炎も白刃も、呆然と立ち尽くしてしまう。

『ダメだよ、俺には先約がいるからね。
それより君にお願いがあるんだけど、聞いてくれないかな?』

『あぁん、いけずなお方……。
でもあなたのお願いなら、何でも聞きましょう。
何がお望みですの?』

『あそこにいるアブソルのことを諦めて欲しいんだ。俺の可愛い友人の仲間だからね。
それと、この牧場のエサはオーナーがメェークルのために準備したもの。
強奪するんじゃなくて、どうしても欲しい時は直接お願いするって約束してくれるかい?』

『えぇ! あなたがそう言うのなら喜んで!』

そう言うとエアームドは颯爽と飛び立っていった。


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