05


「メェークル、落ち着いて! 一旦止まろう!?」

何とか宥めようと声を掛けるけど、すっかりパニックになってしまって止まってくれない。

えっと、確かメェークルって……。

私はもう1度角を握り直し、今度は優しく声を掛け続けた。

メェークルは角から流れてくる感情を読み取るって聞いたことがある。

それなら私が焦ってちゃダメだ。冷静に、メェークルを落ち着かせないと。

「メェークル、大丈夫だよ。お願いだから、止まってくれないかな?」

メェークルの速度がゆっくりと落ちていく。良かった。

地面に脚を下ろして辺りを見回す。

どうやら牧場からだいぶ離れたところまで来てしまったらしかった。

「参ったなぁ。道が分からなくなっちゃった……」

『ご、ごめんなさい……僕のせいだよね。
僕が弱虫な意気地無しだから……』

「誰にだって怖いものの1つや2つはあるよ。気にしないで。
さて、どうやって帰ろうか?」

早く牧場まで戻らなくちゃいけないけど、深い森の中を宛ても無く歩くのは危険だ。

リュックは牧場に置きっぱなししちゃってるし、背負っておけば良かったな。

その時、茂みの方からガサガサと音がした。


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