02


お昼寝タイムが終わるまでに、そんなに時間は掛からなかった。

今はオーナーの案内で牧場に入り、メェークルたちとの触れ合いを楽しむ。

みんな人懐っこい子で悠冬や碧雅とすぐに打ち解けていたり、口数の少ない蒼真には積極的に話しかけたりしてくれた。

ちなみにさっきまでヘソ天で寝てた子は1度寝るとなかなか起きないらしくて、他のメェークルに腹パンされて"ぐえあっ!?"って言いながら起きてきた。

(メェークルたち、サービス精神旺盛というか接客慣れしてるよね)

みんなの反応を見ながら歩き方やスピードを調整しているのは流石だ。

遠くの方では緑炎と白刃を乗せたメェークルが、それぞれ軽やかに走り回っている。

乗り手とポケモンのギャップがすごいのに、妙に様になってるな……。

べ、別に悔しくなんか……。

ん? 白刃を乗せたメェークルがこっちに走ってきた。

「姫は乗らないのですか?」

白刃の言葉にメェークルが"お姉さん、お姫様なの!? じゃあお兄さんは王子様!?"って目をキラキラさせる。

女の子だったのか、この子……。あと期待を裏切るようですごーく申し訳ないけど、私はお姫様じゃないよ。

「私はいいよ。1人で乗るのはちょっと不安だし」

「では、どうぞ私の後ろにお乗り下さい。優雅で快適なライディングをお約束しましょう」

「流石にそれは遠慮します!!」

私が恥ずかしいっていうのももちろんあるけど、2人で乗ったら潰れちゃうよ!

ほらご覧、メェークルが"え゛"って顔で青ざめてるじゃん!

「私はここで見てるから、たまには羽根伸ばしてきてよ。
メェークル、このお兄さんのことお願いね」

メェークルが"はーい"って言って、白刃を乗せて走っていった。

(……ふぅ)

白刃ってたまに突拍子も無いこと言うよなぁ。ごめんよメェークル、ビックリしたよね。

その場に腰を下ろしてメェークルたちと遊ぶみんなを眺める。

(海が近いからか、良い風が吹くよね。……ん?)

視線の先にある植木の陰に何かが見える。あれって、メェークルの角?

「ねぇ君、一緒に遊ばないの?」

私の声に"ビクゥッ!"って擬音語が付きそうな勢いで角が揺れる。

そんなに怖がらないでよぅ。取って食ったりしないから。

『ぼ、僕はここで良い……』

「どうして? みんなで遊んだ方が楽しいよ」

『だ、だって……僕弱いから』

「弱い?」

消え入りそうなほど小さな声で"うん"と答えるメェークル。

話を聞くと、以前この牧場のエサを狙ってエアームドが襲撃してきたことがあったらしい。

その日は牧場が定休日だったのでメェークルたちが応戦したものの、全員が返り討ちにされたんだって。

『オーナーはトレーナーじゃないからバトルは出来ないし、味しめてまた襲ってくるかも……』

その時だった──。


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