06

フユカがこの世界に来る前の話を初めて聞いた。

フユカ自身が特に自分から話すことも無かったし、俺から聞くことも無かった。

(コイツもコイツで苦労したんだな)

親の顔を知らずに生きてきた#name1#と、小さい頃に親と死に別れたアイツ。経歴こそ違えど、確かに似ている。

性格もそっくりだから、出会っていたら良い友人になったかもしれない。

もしかしたら、本当に……。いや、やめておこう。

フユカはフユカだ、アイツじゃない。

少しでも希望に縋りたくてフユカにアイツを重ねてしまうのは、俺の……俺たちの悪い癖だ。

「でもさ。もし緑炎がその女の子と会えた時は、その子に帰さなくちゃね」

フユカの放ったその言葉に、一瞬呆けてしまう。

"帰す"って、どういうことだ?

「何でポカーンとしてるの、緑炎のことなのに。
その女の子が本当のトレーナーなんでしょ? だったら、緑炎はその子のところに帰らなきゃ」

"その日が来たら寂しくなるけどさ"と、フユカは笑う。

その様子を見て、俺は思わず顔を覆って大きなため息をついた。

10年前、屋敷の庭に紛れ込んだポケモンを親の元に帰すと言ったアイツの顔が重なる。

(水恋にああ言っておいて、自分が1番アイツの影に縋ってんじゃねえか……)

でも、それくらいフユカはアイツに……よく似ているのだ。

("シャルロット"……)

今までもこれからも、俺の願いはただ1つ……。



お前に会いたい──。


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