03
みんなでランチの準備をして、緑炎お手製のシチューを食べながら食卓を囲む。
くつくつと煮込まれた熱々のシチューは、塩加減も丁度良くてとても美味しい。
蒼真は猫舌みたいで、これでもかってくらいフーフーしてる。
種族が種族だから仕方ないのかもしれないけど……ちょっと可愛いな。
「ふぅ、結構食ったな。……で、何から話せば良いんだ?」
空になった食器をテーブルに置きながら、緑炎が聞いてくる。
聞かせて欲しいと言っておきながら、いざ何をと言われると聞きたいことが多くて決められなかった。
「では俺から。緑炎はホウエンとカロス、どちらの生まれなんだ?」
「実際のところ、タマゴとして生まれたのはホウエンだって聞いてる。
んでそのままカロスに渡って、セキタイタウンで孵化した」
セキタイタウンっていえば、シャラシティの隣町だっけ?
確か、ストーンサークル的な場所がある町だった気がする。
そういえば、まだ行ってないな……。
「どうしてカロスに来たの……?」
「セキタイタウンには、3000年前から続く神官の血筋がいてな。
その一族の当主が奥方と新婚旅行でホウエンに来た時、当時タマゴのまま置き去りにされていた俺を見つけた。
んで近い内に産まれてくる娘のパートナーにするために、警察署やらポケモンセンターやらに掛け合ってカロスまで連れてきたって話だぜ」
3000年前から続いてるって、すごい系譜なんだな……。想像もつかないや。
「そのご当主は、今もセキタイタウンに?」
「いや……当主の方は、10年も前に亡くなっちまったよ。
ある事件に巻き込まれてな」
「フユカ、"亡くなる"って何?」
「この世界からいなくなっちゃう、ってことだよ。
……じゃあ、緑炎はどうして1人で旅をしてたの?
話を聞く限りだと、パートナーになる女の子がいるんでしょ?」
「それは……」
緑炎の表情が、どこか苦しげに歪む。
つ、突っ込んじゃダメな話題だったのかな……?
「その当主の娘を探してんだよ、俺は」
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