01


アレックスさんたちと一緒にシャラシティに滞在して7日目の夜。

ポケモンセンターのベッドで眠る私は、夢の中にいた。

映し出された場所は、見たことの無いお屋敷。

そのとある一室には以前の夢にも出てきた男性とプラターヌ博士。そしてベビーベッドの中に、1歳になるかならないかの赤ちゃんがいた。

男性はカラカラと音の鳴るオモチャを振って赤ちゃんをあやしているみたいだった。

"あー、よしよし。……どうやったら泣き止んでくれるんだ?"

"赤ちゃんは泣くのが仕事だからね。
ほーら、    。君の大好きなオモチャだよー"

男性からオモチャを受け取った博士がカラカラと鳴らすけど、赤ちゃんは一向に泣き止まない。

あれ……? と博士が少なからずショックを受けるのと同時に、誰かが部屋に入ってきた。

"こんにちは。……取り込み中だったかな?"

部屋に入ってきたのは背の高いガッシリとした体格の男性。その手にはマドレーヌの入った箱が提げられていた。

(あれ……?)



あの人の顔、どこかで見たような……。



"ん? おぉ久しぶりだな、フラダリ!"

えっ!? あの人フラダリさん!?

そう言われれば顔付きとか似てるかも……。

フラダリさんって顎髭が無いとあんな雰囲気になるんだ。

"あぁ、テオも元気そうで何よりだ。最後に会ったのはいつだったかな"

"そうさなぁ。っつっても、先月会ったような気はするぜ"

楽しそうに談笑するフラダリさんと、テオと呼ばれた男性。

私はテオという名前にどこか聞き覚えのある気がしたけど、それが何故なのかは分からなかった。

固い握手を交わしたフラダリさんは出産祝いだと言って箱を手渡すと、ベビーベッドを覗き込む。

"この子が      か。元気な赤ん坊だ。
しかし……奥方のことは、残念だった"

"仕方ねぇさ。
宿命を背負った俺なんかと添い遂げてくれて、命の危険があるってことも覚悟の上でこの子を産んでくれたんだ。
感謝してもし切れねぇよ"

"義兄さん……"

男性が寂しそうにポツリと呟く。

じゃあ、あの人の奥さんはもう……。何故か私も悲しくなってきて、胸がチクチクと痛む気さえした。

"自慢の妻に可愛い娘、良い義弟と親友と使用人たち。俺は本当に幸せ者だよ。
……そうだ。フラダリ、      を抱っこしてやってくれるか?"

"父親でもない私がか?"

"まぁ良いじゃねえか。お前もいつか家庭持つかもしれんだろ"

フラダリさんが恐る恐ると壊れ物を扱うように赤ちゃんを抱き上げる。

すると赤ちゃんは、今までと比にならないくらい激しく泣き出した。

"そ、そんなに嫌なのか……"

ゴーンという音が聞こえてきそうなくらいショックを受ける彼を見て、男性は明るく笑った。

それに釣られるように、博士も肩を震わせて笑いを堪えている。

その夢は、間違いなく穏やかな日常風景が描かれていた。


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