03
「なるほど……。
確かに、彼女のルカリオは強いからね」
アレックスさんは、私の話をバカにすることなく聞いてくれた。
「結局、白刃にあんな負け方をさせちゃったのが、すごく悔しくて。
本人は"気にするな"って言ってくれてるんですけど」
「君は自分のポケモンをとても大切に思ってるんだね。
誰かのために親身になれる君なら、きっと大丈夫だよ」
「そうでしょうか?」
正直、白刃が倒れた時は頭が真っ白になった。
負けた――
それ以外のことは何も考えられなくて。
傷付いた白刃を心配することすらも、コルニちゃんに話しかけられるまでは少しも頭になかった。
こんなんじゃ、トレーナー失格だよ。
「強くなりたいと思ってるんです。
でもそのためにただバトルをするだけじゃ何も解決しないし、ポケモンを傷付けるだけだから」
「トレーナーのために戦うのが、ポケモン……」
また聞こえてきた別の声に振り返れば、そこには1人の男の子。
……ドチラサマ?
「君は?」
「蒼真」
「えっ、蒼真!?」
蒼真って、あの蒼真!?
「知り合いかい?」
「あ、はい。私のポケモンです。
ニャスパーの蒼真って言います」
蒼真はアレックスさんに向かって小さく一礼した。
礼儀正しいのは良いことだけど、せめて何か喋って欲しい。
「てか、いつの間に擬人化したの?」
「フユカが外に出た後……」
「擬人化か……。
自分のポケモン以外の子の擬人化は久々に見たよ。
強い絆で結ばれてる証拠だ」
何となく、蒼真の頭を撫でてやる。
一瞬キョトンとした(ように見えた)けど、しばらくすると気持ち良さそうに目を細めた。
天使か。
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