01


レイナの仲間になってから数日――。

私はフライ返しを片手に台所に立っている。

仲間から聞いた話では、レイナが台所に立ったところを見たことがないという。

來夢たちは料理ができないと言うし、先日の礼も兼ねて朝食を作ることにしたのだ。

「遅いな。就寝時間は遅くなかったはずだが……」

「レイナはいつも起きるの遅いよ。1人で起きてくることなんて滅多にないもん」

「今まではどうしていたんだ?」

「基本的には交代で起こすけど、昨日は來夢が布団を引き剥がして起こしてたよ。
一昨日はあたしが放電して起こしたし」

「……」

どうやらレイナは朝に弱いらしい。

フライパンとおたまを持ってベッドを覗き込むと、何とも幸せそうに眠っているレイナがいた。

(確か、テンガン山経由でヨスガシティに行くと言っていたな……)

早めに起きなければヨスガシティに着く頃には真夜中になってしまうだろう。

安眠を妨げるのは少々悪く思ったが、持っていたフライパンとおたまを打ち鳴らした。




カンカンカンカーン!

「ひぎゃああああああああ!!」

いきなり聞こえてきた音にビックリして思い切り叫んでしまった。

「ちょっと誠士! 他に起こし方無かったの!?」

「すまない、レイナ。
揺するだけでは起きないと笑理に聞いていたから」

確かに布団引っペがされたり放電喰らったりして起きてるけどさ。

さすがにあれは耳が痛い……。

「朝食ができている。
焔が全て食べる前に降りてきた方が良い」

「それは嫌だな……」

以前、朝食抜きになりかけたことあるし。

焔の底なしの胃袋を甘く見てはいけないと実感させられたよ。

「着替えたらすぐ行くから、全部食べちゃわないように焔に言っといて」

「分かった」

部屋を後にした誠士を見送り、着替えの準備を始める。

(ん?)

誠士さっき、朝食が"できている"って言わなかった?

誠士のセリフを頭の中で反芻させながら着替え、ポケモンセンター内の食堂へと向かう。

食堂に通じる扉を開けようと手を伸ばしたら……。

「あ、レイナ! こっちだよー!」

何故か來夢の声が真逆の方向から聞こえた。

私ってこんなに方向音痴だったっけ、とか思いながら振り返る。

そこには來夢と笑理と誠士、そして焔がいた。

テーブルの上にはサンドウイッチとスクランブルエッグ、グリーンサラダが乗っている。

「おはよう、みんな。
それにしても、今日の朝ごはんはやけに美味しそうだね」

いつもはバイキング形式で各自が好きなものを盛り付けている。

しかし今日の朝ごはん、特にサンドウイッチはレストランで注文したもののように綺麗に盛り付けられていた。

「今日の朝ごはんは誠士が作ったんだよ」

「へ?」

これ、誠士が作ったの!?

うわぁ、女として自信失くす……。

「ねぇねぇ、早く食べようよ。僕お腹すいた〜」

全員がテーブルについて手を合わせ、私はスクランブルエッグを1口食べる。

卵がふわふわで美味しい。

「ねぇレイナ、ヨスガシティって何があるの?」

「えっと……まずヨスガジムがあるでしょ? あとはコンテスト会場かな」

「コンテスト会場?」

「ジョーイさんから聞いた話だけど、ヨスガシティでもポケモンコンテストっていう大会が開催されるんだって。
トレーナーとポケモンがアクセサリーで着飾って、ポケモンの魅力を披露するらしいよ」

アクセサリーという単語を聞いた途端、笑理と來夢の目が輝いた。

オシャレが好きなあたり、やっぱ女の子だなぁ。

ジムに挑戦する前に、コンテストを見に行くのも良いかも。

でも、テンガン山を越えなければヨスガシティには着かない。

私の体力が持つかしら……。


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