08

やたらとトゲが目立つギンガビル。

ビルに入ってすぐのところでハンサムさんと出くわし、ヒントをもらったので迷いはしなかった。

ビルの中を探索しながら進む。

もちろん、面倒だから下っ端達は完全無視。

"無視すんなー!"とか聞こえるけど、そんなの関係ないもんね!

それでも追ってくる奴は笑理が放電で追っ払ってくれてる。

悪役とはいえ可哀想とか、そんなことは気にすんな。

『レイナ、いくらなんでもそれは酷いよ』

「何で私の考えてることが分かった……?」

『思いっきり声に出てるから』

うわぉ、マジか……。

視線の先に階段を見つけ2階へ上がると、ギンガ団の幹部らしき女性がピッピを人質にしてカウンターらしき台の前に座っていて、その隣ではスカタンクが目を光らせている。

運の良いことに、その場にいる全員が私たちの存在に気付いていないようだ。

「みんな、よく聞いて。
これからあの幹部の注意をそらす。私が合図したら笑理は放電でスカタンクの動きを止めて。
その隙に私がピッピをあのおじさんの場所まで連れて行く。
準備は良い?」

『『『了解』』』

「じゃあいくよ。笑理、放電……!」

笑理の放電によって部屋中に電気が飛び散り、その場にいた下っ端たちが何事かと右往左往する。



(今だ!)



相手が動揺した隙を狙ってピッピを救出する。

作戦は大成功だ。

「上手くいった!」

『作戦大成功!』

しかし、喜んでいられたのも束の間。

「えらく派手な登場ね。
何か用かしら、と聞きたいところだけど……聞くまでもなく、ポケモンを取り返すのね」

「私たちの目的が分かってるんなら話は早い。
あなたに勝負を挑む! 私たちが勝ったらピッピのことは諦めて!」

「あたしが勝ったら?」

「……私のことは好きにすれば良い。でもポケモンたちには手を出さないで」

私の提案に、女性はニヤリと笑みを浮かべる。

子どもに負けるわけがないという自信だろうか。

「面白そうじゃない。
良いわ! その勝負、このジュピターが相手してあげましょう。
スカタンク、さっさと終わらせるわよ」

『あら、嬉しい。
本気で叩きのめしても良いのね?』

あのスカタンク、メスだったの!?

見かけで判断してました、スミマセン。

「來夢、今回も絶対に勝つよ!」

『う、うん!』

來夢、戦う前からそんなへっぴり腰でどうすんの?

しかもあのスカタンク、相当本気だし……。

『いかにもひ弱そうなお嬢ちゃんね。
退屈しのぎくらいにはなってくれないと嫌よ』



プツン



私の中の何かが切れた。

確かに來夢は気が弱い方だ。

でも、來夢の強さは私たちが1番よく知っている。

私を悪く言うのならともかく、仲間を馬鹿にされて黙っていられる私じゃない!

「來夢、全力のドレインパンチでやっちゃって」

自分でもビックリするくらいの冷たい声が出たと思う。

來夢は物凄い勢いで振り返ってギョッとした顔をしたけど、ちゃんと頷いてくれた。

次の瞬間、向こう側の壁のある方向から爆発音に似た轟音が響く。

「スカタンク!?」

煙が晴れると、そこには目を回して倒れているスカタンクの姿があった。

悪タイプのスカタンクに格闘タイプのドレインパンチは効果抜群なので、相当のダメージを負ったことだろう。

……あれ、でも毒タイプに格闘タイプって今ひとつなんだっけ?

まぁでも、それはこの際置いておく。

「ふぅん、強いのね……」

スカタンクをボールに戻し、ジュピターは私を物珍しそうに見据えてきた。

「良いわ。ポケモン像の調査も終わったし、発電所のエネルギーもマーズが集めた。
1つだけ教えてあげる。
あたしたちのボスは神話を調べ、伝説のポケモンの力でシンオウ地方を支配するの」

「絶対にそんなことさせない。
ポケモンを道具としてしか見れない人の野望なんか、絶対に阻止してやるから!」

「目標を持つことは悪いことではないけれどね……。
でもあなた、ギンガ団に逆らうのはやめておきなさい。
では、失礼」

ジュピターは最初の約束通りピッピを諦め、部下を連れてビルから去って行った。

破られても困るんだけど……。

『人は違ってもやっぱりギンガ団ね。やることが酷すぎる』

『ポケモンはトレーナーのために、一緒に戦ったり遊んだりするのにね……。
そのトレーナーに道具としか見てもらえないなんて、そんなの辛すぎるよ』

『そうだね。……って、レイナは?』

「お嬢ちゃん、本当にありがとう。恩に着るよ」

「いえいえ。ああいう人たちのやることを黙って見ていられない性質なだけで……」

男性は"お礼がしたいから自転車屋へ、いつでもおいで"と言って、ピッピと一緒に帰って行った。

ピッピも本当に嬉しそうな顔で笑っていた。

「みんなー! ポケモンセンターに戻るよー!」

『……僕、自分のトレーナーがレイナで良かったよ』

『あたしも!』

『もちろん私も』

彼らの間でそんな会話がされていたことを、その時の私は知らない。


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