07
ポケモン像――。
それはシンオウ地方に伝わる伝説のポケモン、ディアルガとパルキアを象った像。
この世界はディアルガが呼吸をすることによって時間が流れ、パルキアが存在することで空間が存在する。
そして、湖に住む伝説のポケモンたちによって感情・意志・知識が生まれたのだと、神話では伝えられている。
――って、ジョーイさんから聞いた。
「うわぁー、こうして見るとやっぱり迫力あるね」
「そうだな。こんなポケモンが実際にいるなら会ってみたいぜ」
「えー、無理無理! だって、神様って言われてるポケモンだよ?」
「分からないよ。もしかしたら、ものすごく強いトレーナーだけに姿を見せるのかも」
軽く冗談で言ったつもりだったのだが、何やらジュン君はうーんと唸りだした。
「ものすごく強いトレーナーか……」
あれ?
もしかして、本当に信じてる?
「なーんてね、冗談だ「俺すごいこと閃いた!」……へ?」
「すごいことって?」
「最強のトレーナーになる方法だよ! 良いか、よく聞けよ……。
自分の技は全部当てる! 相手の技は全部かわす!
そうすりゃ、負けるわけない! 無敵のトレーナーだぜ!」
…………。
いや、あながち間違ってはないんだろうけど……。
それができたら苦労しないんじゃないの?
「それができたら苦労しないって〜」
ヒカリちゃん、若干呆れ気味。
「ヒカリたちはポケモン像見とけよ! じゃーなー!」
猛スピードでジムのある方に向かっていったジュン君の背中を見送る。
ちら、とヒカリちゃんの方を見ると、ヒカリちゃんと目が合った。
「すみません。騒がしくて……」
「いや、元気が良くて結構! ヒカリちゃんもジムに行くの?」
「私はジムじゃなくて、コンテストを巡ってるので。
ポッチャマたちと一緒に、立派なコーディネーターになりたいんです」
「コーディネーターかぁ。私、ヒカリちゃんのこと応援するね!」
"ありがとうございます!"と照れくさそうに笑うヒカリちゃん。
可愛すぎる……!
ヒカリちゃんはハクタイシティの観光をするとかで、ポケモンセンターへと向かった。
すると、ヒカリちゃんと入れ違いで長い金髪を持った女性がポケモン像の前に立っていた。
「君、ポケモン像に興味があるの?」
「はい。昔から伝説とか遺跡とか好きで……」
「そう。このポケモン像は大昔のポケモンを象っているの。
なんでも、すごい力を秘めたポケモンだったって伝説に残されてる。
君もポケモンを探していれば、そんなポケモンに出会うかもね。
そうだ、あなたの名前は?」
「えっと、レイナです」
「そう、レイナさんっていうの。覚えておくわね!
あたしはシロナ。ポケモンの神話を調べている物好きなトレーナーよ」
「え!? シ、シロナさんって……まさか、ポケモンリーグチャ……ムグッ!」
"ポケモンリーグチャンピオンの!?"って言おうとしたら、シロナさんに口を塞がれた。
「お願い、あたしがチャンピオンだってことは黙っておいてくれない? 今日はお忍びでここに来てるの」
声を出そうにも口を塞がれているために出せず、黙ってコクコクと頷くと手を離してくれた。
「ありがとう。
じゃあレイナさん、頑張ってね!」
「は、はい!」
あのシロナさんと話ができるなんて……。
嬉しすぎて、今なら空飛べそうだよ。
「さて、私たちもそろそろ出発しようか」
『次はどこに行くの?』
「次はヨスガジム戦に向けて、この街の近くにある迷いの洞窟でトレーニングを積む!
……って言いたいところだけど、その洞窟ってサイクリングロードの下にあるから、自転車じゃないと行けないらしいんだよね」
『ねぇ、レイナ。ちょっと気になることがあるんだけど』
「どうしたの、笑理?」
『あの建物、なんだろう?』
笑理が指差す方を見ると、その先には明らかに悪趣味なビルが建っていた。
何なんだろう……。
そもそも、何でビルの横から刺が飛び出してるの?
「……分かんない。
でも、何かギンガ団が絡んでそうな気がしてならないんだけど」
「あのビルが気になるの?」
不意に声をかけられたので振り返ると、恐らくハクタイシティの住民であろうおばさんがいた。
「気になるというか……悪趣味なビルだなって思って」
「あんたもそう思うかい? 実は最近、ギンガ団とかいう連中がこの街に入り浸るようになってね。
この間だって、そこの自転車屋さんのピッピを無理矢理強奪していったって話だよ」
やっぱりギンガ団絡んでた!
まさかの予想的中!
「ピッピが……。私、行ってきます!」
「ちょいとお待ち! やめといた方が良いよ。
触らぬ神に祟りなしって言うじゃないか」
「忠告は嬉しいんですが、私ギンガ団みたいな人たち、許せないんです。
それに、他人のポケモンを強奪するなんて見過ごせません。
きっとピッピのトレーナーも心配してるでしょうから……困ってる人をほっとけないんです」
さぁ、奴らのビルでひと暴れしてやろうか――。
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