03

『な……ん、だよソレ……。コイツらが……レイナとナオトが命捨てる必要がどこにあんだよ!?』

『人間が神に等しい力を使うんだ。軽いリスクで済むわけねぇだろ。
ましてや、"時間と空間"っつう概念そのものを扱うんだから尚更な』

『神子がお前たちにそれを明かさなかったのは、何かしらの理由があってのことだろう』

2人とも心の優しい人間だからな、とディアルガが零す。

もしかしたらレイナは、初めからこうなることが分かってたのかもしれない。

命の危険があることを伝えたら、私たちが世界を犠牲にしてでもレイナを止めるだろうことも。

だからこそ、あえて言わなかったの……レイナ?



『いいえ、諦めるのはまだ早いわ』

突如聞こえてきたエムリットの声に、弾かれるように顔を上げる。

『それは……まだ助かる可能性があるってことか?』

『とはいえ、あなた方にできることは待つことだけです。
……先程時空の歪みを閉じた時、大穴の向こうからギラティナ様の強い力を感じました』

『……ぐすっ……ひっ、く……。ぎあてぃなって……?』

『まさかたぁ思うが……。アカギって野郎を大穴に引きずり込んでった、あのバカデケェ影のヤツか?』

『ギラティナ様はかつて、主神・アルセウス様への叛逆罪で"破れた世界"へ追放された御方さ。
けどそれ以降は自身の行いを反省して、表側であるこっちの世界を見守っておられる。
……あの御方の本来の役目は、世界に歪みが生じた時に裏側から安定させること。
だからもしかしたら、神子に掛かる負担が少なくて済んでいるかもしれない』

あくまでその可能性があるってだけで、誰も確証は持てない。

でも……少しでもレイナが命を取り留める可能性があるなら。

その希望を捨てたくはない。

『……それなら、俺はその可能性に賭ける。
何年掛かろうが構わねぇ。目を覚ましたら……"寝坊助"って言ってやるよ』

緋色のその言葉に、私たちも満場一致で頷く。

『……そうか。神子は良い仲間を持ったな』

『あぁ、そうだな』

その時、誰かの呻く声が聞こえた。


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