03
『おい小僧! いい加減腹ァ括りやがれ!!』
『わっ!? び、びっくりしたぁ〜……』
銀嶺さんは大きな声でナオトを一喝すると、その目の前に立ち塞がった。
……うん。ハガネールが真顔で見下ろしているっていうのは、なかなかに怖い。
擬人化してたら、あの強面顔で仁王立ちしてるよ絶対。
『レイナは平気で嘘をつけるような人間じゃねぇ。ましてや他人を騙すのを良しとしねぇヤツなのは、テメェが1番知ってんじゃねぇのか!』
銀嶺のお説教(?)が効いてるのか、明らかにナオトの目が泳ぎ始める。
このままナオトが奮起してくれれば、アカギに対抗できるかもしれない。
というか、初めて銀嶺さんに名前で呼ばれたな……。
『妹の安全は保証されてる、レイナは神子っつう立場でギンガ団に反撃する気でいる。
ならあの野郎の言いなりになる理由がどこにある?
テメェも男なら……"世界も妹も、惚れた女もまとめて守ってやる"くらいの啖呵を切ってみやがれ!!』
その言葉と同時に、ナオトの瞳に光が戻る。
「……そうだった。メイのことも、レイナのことも……今度こそどちらも守る。
それが僕の願いだった」
ナオトとゆっくり立ち上がると、真っ直ぐ銀嶺さんを見据える。
「お前のおかげで目が覚めた。ありがとう、銀嶺」
『分かりゃあ良い。だが、俺よりも話をするべき小娘が目の前にいんだろ』
微かに笑った後ナオトがこっちを振り返る。その表情はどこか照れくさそうだった。
「レイナもすまなかった。恥ずかしいところを見せてしまったね」
「うぅん、気にしないで。
……アカギを止めよう、ナオト。その後でさ、一緒に妹さんを迎えに行こうよ。
ナオトの無事を知ったら、きっと喜んでくれると思う」
「……うん、そうだね。僕ももう、覚悟を決めた」
彼のその表情から、迷いの色は消えていた。
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