03


テンガン山・槍の柱──

ディアルガとパルキアを呼び出すための準備が着々と進んでいく。

そんな中、僕は気を失ったレイナを前に静かに涙を零した。

「……本当に、すまないレイナ。
僕は君を裏切った。今世こそは、君を幸せにすると……誓っていたのに」

意識の無い彼女に僕の懺悔は届かない。いや、もう2度とこの想いが届くことは無いのだろう。

アカギの造る"新しい世界"……心を不要なものと切り捨てる世界が、もう目の前まで迫ってきているのだから。

彼女の首に装着されたチョーカーを、スルリと撫でる。真ん中には赤い六角形のクリスタルが施されていた。

見ただけですぐに分かった。これは赤い鎖を模して作られた、彼女の心を失くす装置なのだと。

(彼女の意識を支配するためのものか)

恐らく、赤い鎖を発動させると同時に作動する仕組みなのだろう。

レイナを……確実に"鍵"とするために。

「アカギ様、準備が整いました」

「ついにこの時が……」

「やっと、アカギ様の理想の世界が完成するのですね!」

「サターン、マーズ」

「「はっ」」

サターンが素早く僕の後ろに回り込んで羽交い締めにする。

突然のことに動転しながら、僕はモンスターボールベルトを外して放り投げた。

「ぐ、ぅっ……! いきなり何の真似だ!」

「アハハ、驚いた? 直前になって裏切らないようにってあなたの分も用意したのよ」

マーズが妖艶な笑みを浮かべながら歩を進めてくる。

そしてその手に持っていたチョーカーを、僕の首に巻き付けた。

その瞬間、例えようのない感覚が全身を襲う。

赤い鎖の性質によるものか、気が狂ってしまいそうだった。



「……ぁ……あ、ぐっ! う゛……ああああああああぁぁぁ!!」



ボールの中から僕の名前を叫ぶ声が聞こえる。

そして僕の思考は、心は……虚無へと落ちていった。


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