06
「……レイナ?」
「ジュン君は頑張ってるよ。
君が努力しているところを直接見たわけじゃないけど……。
夢に向かって一生懸命だから、その想いにポケモンたちが応えてくれたから、ここまで来られたんでしょ?
ジュピターの言葉に負けちゃダメ」
腕を離し、ジュン君の目を見つめる。彼に目にはまだ暗い色が残っていた。
「ねぇジュン君、"強さ"って勝ち負けだけじゃ決まらないんじゃないかな?」
「え?」
「極端な話かもしれないけど、勝ち負けだけで全てが決まるなら……力だけが全てなら、ただ残虐に振る舞えば良い。
でも暴力で全てを解決するような人には、誰もついていかないでしょ?
仲間と一緒に夢に向かって手を伸ばして、諦めず地道に努力できるのも1つの"強さ"だって私は思うんだ」
少しずつでも良いから前に進んで欲しい。だってジュン君は1人じゃないんだから。
「"もう弱いなんて言わせない"って、ジュピターを見返してやろうよ!
ジュン君、君の夢は何? 君が憧れるお父さんは、どんな人?」
「……そうだ。俺は最強のポケモントレーナーになるんだ。
ダディみたいな、"優しくて強いトレーナー"に」
ジュン君の目に光が戻っていく。
彼は勢い良く立ち上がると、"よし、そうと決まれば早速トレーニングだ!"と力強い口調でそう言った。
すっかり元気を取り戻したのを見て、私はホッと胸を撫で下ろした。
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