08
「逃がしたか……」
ナオトが悔しそうな顔で空を見上げる。
『これからどうすんだ? 湖のポケモンは連れ去られちまったし……』
「コウキ君とヒカリちゃんが心配だから、私はシンジ湖に行くよ。
ナオトはエイチ湖に行って、ジュン君を助けてあげて」
さっきのサターンの話が本当なら、エイチ湖にはジュピターがいるはず。
それに万が一プルートもいたら、ジュン君が危ない。
「……分かった。早く片がついたら、すぐシンジ湖に向かうよ。
無理だけはしないと約束してくれ」
"うん、約束する"という私の返事を聞いて、ナオトがほんの少しだけ微笑む。
その後ろ姿が見えなくなったのを確認した後、私も気を引き締め直す。
すると幸矢が私を呼んだ。
「どしたの、幸矢?」
『アンタ、あのポケモンのことを"アグノム"と呼んでいたな。
ナナカマド博士でさえ知らなかった名前を、どうして知っていた?
……湖のポケモンについて、何か知ってるのか?』
みんなが一様に黙って私の言葉を待っているのを感じる。
私は真実の一部を隠した上で、時の神子の記憶が全部戻ったことを掻い摘んで話した。
『何か……話が奇天烈すぎてついてけねぇや』
「まぁ、普通はそうだよね。それより今は目前のことに対処しなきゃ。
勇人、マサゴタウン方面に飛んで」
どうか、みんなが無事でいますように……!
そう必死に祈りながらシンジ湖へと向かった。
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