06


夢の中でディアルガに別れを告げ、私の意識は浮上していく。

目を覚ますと、そこには心配そうに私を覗き込むナオトがいた。

「ナオ、ト……」

「大丈夫かい、レイナ?
涙が零れていたから拭いてあげようと思ったんだけど、起こしてしまったみたいだね」

彼の背後からは満月の光が差し込んでいて、彼の顔を照らす。

その淡い光が痛いくらいに優しくて、かつての最後の日と全く同じだった。

「何か怖い夢でも見たのかな。
悪夢を見た時は、誰かに話すと良いらしいよ。嫌でなければ聞かせてくれないか?」

「アルフォンス……あの時のナオトって、そんな名前だったんだね」

「えっ……?」

かつて彼が名乗っていた名前を口にすると、彼の動きが分かりやすく静止した。

その表情は驚いているような、今にも泣き出しそうな複雑な色が滲んでいる。

「私、全部思い出した。
時の神子の存在が何なのかも、自分の神子としての役目も。
私が……"ヘレナ"って名前だった時のことも、全部。
お願いナオト、隠さずに教えて。ナオトは、神子としての記憶をどこまで持ってるの?」

あの記憶の鍵を開けたのは私が先であって欲しい。そう願わずにはいられなかった。



「……全部、持っているよ。君に出会う前からずっと」



「じゃあ……前世の私たちのことも、神子の本質も全部知ってたんだね」

「……すまない。記憶を取り戻していなかった君に、話すべきではないと思ったんだ。
いきなり神子や前世の話をしても信じてもらえるとは思わないし、君が思い出すまでは胸の内に閉じ込めておくつもりだったから」

ナオトは神子の役目のことも最後の日の時の感情も、ずっと抱えて今日まで過ごしてきたんだ。

私の記憶の封印が残っている間も、ずっと。

それなのに私は、 何も知らずにのうのうと生きてきた。

「ごめんね、ナオト……。ナオトはずっと私のことを想ってくれてたのに。
私は記憶が戻るまで、何も知らなかった」

「気にすることはないさ。
記憶がいつ戻るかなんて、誰にも分からなかったんだから。
……泣きたい時は泣いて良いよ。今夜はずっと傍にいるから」

ナオトの肩に頭を乗せる私を暖かい腕が包み込む。

静かに嗚咽を漏らす私の髪に、彼の涙がポタポタと零れ落ちた。


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