02
再び花吹雪が舞うと、私は闇に包まれていた。
(これは……)
今の私なら断言できる。以前湖のポケモンに会った時の、あの暗闇の夢だ。
最初の青い光がアグノム。その次の黄色の光がユクシーと来れば、最後に誰が来るのかは容易に想像出来た。
『……神子』
「その声は"エムリット"だね?」
暗闇の真ん中に浮かび上がったのは、桃色の光。
私が名前を言い当てると、驚いたようにチカチカと瞬いた。
『……! 神子、記憶が戻ったの?』
「まだ全部じゃないみたいだけど、一応……。
君たちと初めて出会った時のことは思い出したよ」
『そう……。記憶の封印が解けてきているのね。
これから神子としての自分を取り戻していくはずよ』
"神子としての自分"……か。
記憶が全部戻った時、私は今の私のままでいられるのかな?
「そっか……。ちょっと怖いなぁ」
『怖い?』
「うん、自分が自分じゃなくなっていく気がして……」
『いつの時代も、あなたはあなたよ。忘れていた記憶が還っているだけ。
今は"レイナ"という1人の人間……それ以外の何者でもないわ』
「……そうだね」
エムリットがそう言うんなら、そうなのかな。
その言葉を聞いて、心のどこかでホッとする自分がいた。
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