01

視界が開けば、そこは色とりどりの花が咲き乱れる花畑だった。

(私、どうなったんだっけ……)

確か誠士が怒りで我を忘れて暴走して……。

それで……――



(あ……)



そうだ、あの後気を失ったんだ。

え、ってことは……ここってあの世!?

と思って辺りを見回せど、川らしき場所は無い。

……三途の川ではないってことかな。

思わずうっとりするほど綺麗な花畑で、アゲハントたちが多数飛び交っている。

そんな中、アゲハントたちが私に声を掛けてきた。

『おいで、おいで。僕たちについておいで』

『凛々しく勇敢な騎士の乙女。あっちで運命の相手が待っているわ』

騎士の乙女? 運命の相手?

ちょっと待って、タイム。彼らの話の意図がまるで見えない。

このままアゲハントに着いて行ったら、本当にあの世に行っちゃうんじゃ……。

私はまだあの世には逝けない。みんなのところに帰らなくちゃいけないのに。

でもそんな気持ちとは裏腹に、私の体は自然とアゲハントの後ろを歩いていく。

歩く度にカシャン、カシャンと何かが擦れる音がする。どうやら私は白銀の鎧を着ているようだった。

背中には私の瞳の色と同じ、青いマントが風を受けてなびいている。

一際強い風が吹き、視界いっぱいに花吹雪が舞った。

(私……この場所を知ってる。この花畑に、来たことがある)

それは予感でも推測でもなく、決定的な実感だった。

それだけじゃない。今私が着ている鎧も、羽織っているマントも、腰に帯びている細身の剣も。

今この瞬間の何もかもを、私は知っていた。

『ほら、見えてきたわ』

『彼が君の運命の人だよ』

花畑の中心に立つ、1人の男性。

ノモセジムでナオトの姿に重なって見えた、黒いマントの騎士だった。

騎士は私の前に跪くと、私の手の甲に口付けを落とす。

私のことを"ヘレナ"と呼んだその騎士の顔は、ナオトと瓜二つだった。


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