01

気を失っていた私が目を覚ますと、あたり一面に草原が広がっていた。

そして目の前には大きな湖がたゆたう水をたたえている。

「どこなの、ここ? 湖……なんだよね?」

あたりをキョロキョロと見回してみると、もといた世界には存在しないムックルやビッパといったポケモンたちが私を不思議そうな顔で見ている。

「本当にシンオウ地方に来ちゃったんだ……」



ガサッ

「!!」



揺れた草むらの方を見ると、何やら緑色の生き物が頭を覗かせていた。

しかも何かを探しているかのように動いている。

野生のポケモンかも知れないと思った私は声をかけてみることにした。

「ねぇ、そんなところで何してるの?」

『!?』

いきなり声をかけられたことに驚いたのだろう。

"ポーン!"という音が聞こえてきそうなくらいの勢いで、そのポケモンは姿を現した。

飛び出してきたポケモンの姿を見て驚愕する。

「え、何で? この子はイッシュ地方にしか生息しないはずじゃ……?」

私の前に飛び出してきたポケモン……それはシンオウ地方には生息しないはずのランクルスだった。

しばらくお互いを見つめ合っていると、ランクルスがいきなり涙をボロボロと零し始めた。

「え、ちょ、どうしたの君!? どこか痛いの!?」



『レイナ〜! 会いたかったよぉ〜!』

「ぐはっ!!」



野生のランクルスの捨て身タックル!▼

効果は抜群だ!▼



ちょっと待って。

何で野生のランクルスが私の名前を知ってるの。

「うぐっ、ゲホッ……。な、何で私の名前を知ってるの?」

咳き込みながらランクルスにそう問いかける。

すると彼女(女の子だと思う……たぶん)はショックを受けた顔になった。え、何で?

『……え……。レイナ、私のこと覚えてないの……? ほら、來夢だよ。
私、レイナが小さかった頃からずっと一緒にいたんだよ……?
やっと……やっと会えるって……やっと会えたって、嬉しかったのに……』

「え、えっと……何かごめんね?」

"やっと会えた"ってことは……私を自分のトレーナーと勘違いしてるとか?

でも、それだと"小さい頃からずっと一緒にいた"って部分が矛盾してくる。

それにこの子は(理由はどうあれ)私の名前を知っていた訳だし、嘘をついているようにも見えない。

というか進化前のユニランならともかく、野生のランクルスが……それもシンオウ地方にいるのは何故なんだろう?

ゼリー状の手で大事そうにモンスターボールを持ちながらポロポロと涙を零すランクルスを前に、どうしたものかと頭を悩ませた時だった。



「こんな所で何をしているのかね?」

「え……」



いきなりかけられた声に驚きいて振り返ると、白衣を着ていかにも"学者です"といった服装の男性と赤い帽子をかぶった少年が立っていた。

「フム……珍しいポケモンを連れているな。シンオウ地方では見たことがない」

「え? あ、あの……?」

成り行きについていけない私を見て、男性は咳払いをして"これは失礼"と謝罪した。

聞けばその男性はナナカマド博士といって、この湖の近くにあるマサゴタウンでポケモンの研究をしているのだそうだ。

そして少年の方はコウキ君といい、ナナカマド博士の助手をしているらしい。

「君の名前を聞かせてもらえるか?」

「あ、はい! レイナといいます」

「レイナ君か。この付近では見かけない顔だが……出身はどこかね?」

出身は、と聞かれて言葉に詰まる。

もともと私は別世界からシンオウ地方にやってきたのだ。

別世界からトリップしてきました、なんて話をそう簡単に理解してもらえるはずが……あるわけない。

しかし、その後の博士の言葉に励まされてシンオウ地方にやってきた経緯を詳しく話した。


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