09


「焔、もう1度マッハパン……チ?」

次の手を指示しようとするのと同時に、焔の体が青白く光る。

みるみると姿形が変わっていき、一際激しい光を放つ。

モウカザルの時よりも伸びた上背、しなやかさの中に力強さを感じる腕、内に秘める闘志を象徴するように燃え上がる炎。

ゴウカザルに進化した焔の姿が、そこにあった。

「焔が……進化した……!」

『レイナ』

以前よりも低くなった声が私の耳に届く。

彼の青い瞳は、真っ直ぐに私を見据えていた。

『レイナ、大丈夫だよ。例えレイナが恐怖の中に落ちたとしても、僕たちが側にいる。
足が止まりそうになったら、手を引っ張ってあげる。
ナオトたちにもきっと追い付ける。だから何も怖がらなくて良いんだよ』

「……うん……うん、ありがとう焔! 次の一撃に全てを掛けるよ!」

頼もしく育ったなぁ。ちょっと泣きそうになったじゃんか。

「トレーナーの強い想いを受け、進化したか。
我が相手に不足なし! トリデプス、ストーンエッジだ!」

「焔、跳んで!」

ストーンエッジをかわした焔が、陸上選手顔負けのジャンプでトリデプスの頭上を取る。

最後に支持したマッハパンチは無数の連撃、インファイトとなって勝利を掴んだのだった。



「トウガンさん、ありがとうございました」

「迷いは無くなったようだな」

「はい」

ナオトに追い付くことに拘って、いつの間にか"負けてはいけない、勝ち続けなきゃいけない"って自分を追い込んでた。

そうでなきゃ、いつまで経っても対等にはなれないって。

でも、私たちは私たちで進めば良いんだよね。

「ポケモンたちと一緒に、ゆっくりでも良いから進んでいきます」

「うむ、焦らずドッシリと構えて着実にな。
さぁ、これがワシに打ち勝った証・マインバッジだ。受け取ってくれ」

「はい! ありがとうございます!」

トウガンさんからマインバッジを受け取って、ケースに収める。

ポケモンリーグに挑戦するのに必要な数は8つ。残り2つだ。

「残るはキッサキとナギサのジムバッジか。どっちのジムリーダーも手強い相手だ。
もし良ければ、君も鋼鉄島でトレーニングをしていくと良い。
コモルーのバトルスタイルを確立させる機会にもなるだろう」

そこまで言ったトウガンさんは、"いやしかし、何とも惜しい"って呟いた。

惜しいって、何がだろう?

「ワシの中で、君は息子の嫁の有力候補だったんだが……。
まぁボーイフレンドがいるなら仕方ないな!」

その話まだ諦めてなかったんです!?

顔に熱が集中するのを感じながら口をパクパクさせる私を見て、トウガンさんは豪快に笑った。


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