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「……」



心臓が握り潰されそうな思いだった。彼はあまりにも達観し過ぎている。

言葉の節々には諦めのような色が混じっていて。それならいっそのこと、今ここでその怒りをぶつけて欲しいとさえ思った。

"許して欲しい"なんて言えない。言えるわけがない。

人間全員がそうでないとはいえ、身勝手な人間のせいで辛い思いをするポケモンがいるのもまた事実。

人間の都合で家族や仲間と引き離され、住処を追われ、最悪の場合ハンターに商品として売り飛ばされる。

それを許してくれなんて、あまりにも虫が良過ぎる。

私がそんなことを考えながら聞いているとは思っていないのか、誠士は言葉を重ねていく。

「すぐに見つかるとは思っていない。だがそれでも、私にとって"強さとは何のためにあるのか"を探したいと思ったんだ。
恐怖や痛みを与えるためのものではないと、自分に証明するために。
だから……泣かないでくれ」

誠士の指が目じりに溜まった涙を攫っていく。

いつの間にか泣いていたみたい。

「……ごめん、ごめんね誠士。私、誠士のこと何も分かってなかった。
裏でそんな感情を抱いてたことも、人間のせいで辛い思いをしてたことも……何も知らなかった」

「いや、私も話さなかったからな。レイナが気に病むことはない。
それに私は、今の仲間と出会えて本当に良かったと思っている。
居場所をくれたレイナに感謝することはあっても、憎むなんてことはありえない」

そう言って私の頭を撫でた誠士の手つきは、悲しくなるくらい優しかった。


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