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ポケモンセンターに戻ってお風呂を済ませ、みんなが寝静まる頃。

闇色の空が星と月で着飾る中、何となく寝付けなくてベランダに出る。

穏やかな潮騒が心地よく耳に響いた。

(振り出しに戻っちゃったというか……何の進展も無かったな)

伝承にも物語にも語られていない、"時の神子"。

実際のところ自分がそうだという実感は全く無いし、アカギの目的がディアルガとパルキアだってことを考慮しても……"神子"を狙う真意が分からない。

(確か湖のポケモンたちはディアルガとパルキアのどちらかと均衡を保つことはできても、両方と同時には無理だったはず。
時の神子もディアルガが生み出したってことはユクシー? から聞いたけど、神子としての在り方や役目が明確になったわけじゃないし……)

そこまで考えて、はたとナオトのことを思い出す。

そういえば暗闇の夢の話をした時、彼は言っていた。あの青い光に"空間を司る神子だ"って言われたって。

ナオトは……神子について何か知ってるのかな?

ふぅと小さく溜め息を着いた時、背後から"レイナ?"と誰かに呼ばれた。

声の主は誠士で、月光に照らされたその顔はどこか哀愁が漂っているように感じた。

『今夜は冷える。あまり薄着でいない方が良い』

擬人化した誠士が、いつも羽織っている上着を掛けてかれる。

私には大きいサイズだけど、寒さを防ぐにはもってこいだ。

「ありがと、誠士。でも、こんな時間まで起きてるなんて珍しいね?」

「あぁ、少し寝付けなくて……。勇人と幸矢を見ていて、色々と思うところができた」

「勇人と幸矢?」

何か……珍しい組み合わせだな。

「幸矢は"自分にとっての強さとは何を指すのか"を、勇人は"強くなるために自分がどう在るべきか"を模索しているだろう?
それなら……"私の強さは何のためにあるのか"を考えたら、分からなくなった」

誠士は元々のポテンシャルがメンバーの中で1番高い。でもその力を振るうには何かしらの理由があるはずで。

彼の言わんとすることが私たちと旅をする"現在"の話ではなく、過去を含める根底のものだということは何となく分かる。

誠士は少しの沈黙の後、"聞いてくれるか?"と静かに口を開いた。


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