08


「それにな。ワシが思うに、お前さんは重量級のバトルよりも耐え忍ぶバトルの方が合っていると思うぞ」

「耐え忍ぶバトル、ですか?」

「うむ。相手の攻撃を粘り強く耐え、ここぞという場面で反撃する。
そうやってスピードの遅さをカバーするんだ」

「……あ」

勇人が何か思い付いたみたい。彼にとって良い気付きになったかな?

「なるほどな、そういうことか。ありがとうな、トウガンさん!」

「良かったね、勇人。私からもありがとうございます」

「いやいや、ワシはただアドバイスをしたに過ぎんよ。
それをどう完成させて自分の持ち味とするかは、本人の努力次第だからな」

そう笑ったトウガンさんは一瞬の沈黙の後、ポツリと"懐かしいな"と呟いた。

思わず首を傾げてしまった私を見て、"少し昔を思い出した"と頬を緩ませた。

「ワシがまだクロガネジムのジムリーダーをしていた頃、カミさんに内緒で夜中にラーメンを食べに出ていた時期があったんだ。
それで1度だけ、息子を連れていつもの店に行ってな。アイツの口周りを拭いてやりながら、ラーメンを啜ったものだ」

"家に帰ってからカミさんにこっぴどく叱られたがな"って笑う。

ヒョウタさんのこと話すトウガンさんはとても愛情に溢れた目をしていて。

その横顔は紛れもなく1人の"父親"のものだった。


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