06


夕飯を食べ終えて、順次お風呂に入る。

來夢が戻ってくると、幸矢が來夢のハンカチを返した。

「そら、出来たぞ」

「直ってる……!」

來夢の隣から覗き込んでみると、來夢のハンカチは新品とはいかないまでも綺麗に復活していた。

解れていた縁は飾り刺繍で補強され、大きな汚れの部分にはランクルスの刺繍絵がある。

「あの、ありがとう幸矢」

「えっ、すごっ!? 幸矢って器用だね」

「た、たまたま始めたら相性が良かっただけだ」

褒められることに慣れていないのか、半ば押し付けるように図鑑を返してくる。

照れ隠しなのかもしれないけど、耳が赤いの隠れてないぞ幸矢。

「ねぇ幸矢、今度あたしにも教えて!」

「……時間のある時にな」

何だかんだいって面倒見が良いんだよね、幸矢。

食器を片付けていた誠士と勇人も戻ってきて、みんなでテレビを見始める。

「あ。次のお風呂、僕だった。行ってくるね」

「待て、焔」

幸矢に呼び止められた焔が不思議そうに止まると、幸矢は焔の腕に紐のような物を結んだ。

あれって、もしかしてミサンガ?

「……これ、何?」

「俺も名前は知らん。
だが、人間はこうして揃いの紐を身に付けて結束を強めると聞いたことがある。
この紐が自然に切れた時、願いが叶うらしい」

あ、やっぱりミサンガだ。

焔のは……炎タイプだからオレンジなのかな。

「へぇ、ありがとう幸矢!」

焔がお風呂へ行ったのを見送ると、幸矢は來夢たちにもミサンガを配り始めた。

來夢はピンク、笑理は黄色、誠士と勇人は濃い青。

1人1人の腕に、幸矢自らミサンガを結んで回る。

色は……タイプ別に決めたのかな。さっきまで図鑑見てたもんね。

「アンタの分だ」

そう言って、私の腕にも結んでくれたのは水色のミサンガ。

デパートから帰ってきて直ぐに、好きな色を選べって言われて選んだ物だ。

「ありがと。幸矢のは私が結んであげるよ」

「いや、いい。自分で結べる」

「まぁまぁ、そう言わずに」

最後のミサンガをスルリと抜き取り、幸矢の腕に結ぶ。

水タイプだからなのか、彼のも水色だった。

口数の少ない幸矢だけど、こうして歩み寄ってくれることは素直に嬉しい。

みんなが揃いのミサンガを身に付けて何を願うのか、少し楽しみになる夜だった。



(手先は器用なのに、対人関係は不器用なんだよねぇ……)

(何か言ったか?)

(ううん、何でもないよ)


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